市川海老蔵、スターが抱える宿命。彼を取り巻く三人のオンナたち前世がどうとか、守護霊が誰とか言われると、へぇとかほおと言いながら鼻をほじってしまう私ですが、それでは科学で解明できないことは信じないかというと、そういうわけでもなく、むしろ縁やめぐりあわせを強く信じているほうかもしれません。
スターの条件とは何か?
目には見えない何かがこの世にある。それを感じずにいられないのが、スターという存在です。スターの人生というのは、一筋縄ではいきません。宇多田ヒカルの母、藤圭子はマンションから飛び降り自殺を図っています。安室奈美恵の母は義弟に殺害され、吉田美和は9歳年下の夫を不倫略奪して結婚に至りますが、夫は30代の若さで亡くなってしまいます。スターに才能や運が必要なことは言うまでもありませんが、記憶に残るスターになるために必要な条件は、悲劇ではないかと思うのです。悲劇から立ち上がり、さらなる名声を生み出せる人、それがスターなのではないでしょうか。
歌舞伎俳優・市川海老蔵の妻、麻央さんが亡くなり、一年が経過しました。人生百年と言われる時代、30代の若さで幼い子を二人残して、麻央さんが旅立つことになるとは、誰にも予想だにつかないことだったでしょう。
特にファンでもない人でも、事態が飲み込めているかどうかもわからないお子さんの姿は、胸に迫るものがあったと思います。格差が広がる社会で、人々は余裕を失い、他人に共感しづらくなっています。しかし、人には誰しも母がいることを考えると、子どもを置いて母親が旅立つという麻央さんの悲劇は、すべての日本人に刺さる痛みだったといえるのではないでしょうか。
憔悴する海老蔵を見て私が思ったのは、やはりこの人はスターだということでした。つらい経験をすることで、本人の意志とは別に、自らの立ち直る姿、子どもの成長という見せ場を得たのです。スターとは、本当に皮肉なものだと言わざるを得ません。
光源氏と海老蔵の切っても切れない縁とは・・・
海老蔵は七月大歌舞伎で「源氏物語」を演じます。市川團十郎家と源氏物語のつながりは深く、海老蔵自身の初お目見得も「源氏物語」でした。
海老蔵は市川新之助であった2001年に、作家・瀬戸内寂聴が初めて歌舞伎の脚本を手掛けた「源氏物語」で、光の君を演じています。2004年の海老蔵襲名披露公演の際、寂聴は新作歌舞伎「源氏物語」を書き下ろしています。当時の「婦人公論」(中央公論社)で、寂聴は「海老蔵は女たらしで光源氏ぴったり」という意味の発言をしていたと記憶しています。