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貧困度の高い日本は格差是正策を打つべきだ

2015-12-21 10:48:54 | ブログ
貧困度の高い日本は格差是正策を打つべきだ


日本の相対的貧困度は、34のOECD諸国のうち6番目に高いという(写真:soramushi / PIXTA)

フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は所得格差をめぐる鮮やかな問題提起で注目され、その著作『21世紀の資本』は2014年から15年にかけて世界的なブームを引き起こした。英国オックスフォード大学フェローのアンソニー・アトキンソン氏は、ピケティ氏が師と仰ぐ不平等研究の先駆者だ。彼は今世界、そして日本の格差問題をどのように見ているのか。特別に寄稿してもらった。

経済的不平等の現状に関する懸念は世界中で共通のものだ。近年は豊かな国と貧しい国との差が縮まり、世界全体として見れば1日に1.90ドル(約230円)以下で暮らす極貧層の数は目覚ましく減った。

豊かな国における貧困


アンソニー・アトキンソン教授の新刊『21世紀の不平等』は世界16カ国で刊行されている

ただ、不平等は多くの国で生じており、豊かな国にも貧困が依然として存在している。これを受けて米国のオバマ大統領は、不平等の問題を「現代における明確なチャレンジ」と呼んだ。

同様に、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事も「不平等は世界の経済的システムの安定性を脅かすものだ」と述べた。そして国連のメンバーは2015年9月に、貧困と不平等の問題を強調した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に署名した。

だが世界のリーダーたちは、不平等をなくして貧困に打ち勝つために取る手段そのものについては発言していない。彼らは公正な成長を求めているが、それはどうしたら実現されるのだろうか。

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この問題に取り組むために、私は『21世紀の不平等』を書いた。この本に私は所得の不平等と貧困を減少させるための15の具体的な提案を盛り込んでいる。


『21世紀の不平等』の原型は、ピケティ本に対して発表した不平等解消のための提言(写真:Oxford Martin School)

日本における所得の不平等や経済的困窮の程度は、1世代前よりも目に見えて高くなっている。米国や英国ほどの高さではないかもしれないが、ドイツやフランスよりは高い。OECD(経済協力開発機構)による2013年の経済調査には、日本での不平等と困窮について「共に近年上昇しており、相対的な貧困度は34のOECD加盟国で6番目に高い」とある。

日本の場合、財政再建への取り組みが不平等と貧困にかえって悪影響を与えたといえる。不平等には世代間格差という重要な側面があるが、これには政策の影響も大きいといえるだろう。

労働者よりも高齢者へ向けられる国の支出

大阪大学の小原美紀氏と大竹文雄氏の研究によれば、日本では社会の高齢化に伴い高齢者への国の支出が増加しており、訓練や教育のための助成金などといった労働人口への支出は、かなり限定されているということだ。

ただし、不平等を減らすことはただ単に財政の課題であるわけではない。この本、『21世紀の不平等』での提案の多くは賃金と資本所得に関連したものだ。収入格差の拡大は、高学歴労働者に対する需要がその供給以上に早く増えることからもたらされる。経済学の教科書にはそう書かれている。

オランダの経済学者であるヤン・ティンバーゲンは40年前に、優秀な労働者を生み出すための教育と、より多くの熟練工を必要とする技術的な変化とのせめぎ合いについて解明した。それに加え、今日は労働者の需要がグローバル化しているという要因もある。

この話は、それぞれの国の労働市場に関する制度に照らして考える必要がある。日本での非正規雇用の割合は1984年から12年の間に2倍以上に増加した。

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所得は雇用からだけではなく資本の所有からも生まれるものである。トマ・ピケティは日本での、資産と所得の高い相関に注目した。だが富の所有と富のコントロールとの区別をすることが重要だ。

今日では多くの国で、富は100年前よりもずっと公平に分配されている。だが、確定拠出型年金基金に入っているからといって、その基金が投資する会社の意思決定に参加することはできない。だから私はステークホールダー間での力のバランスを見直す必要性について論じている。

この目的のために、独占禁止政策に所得分配の観点の導入や、適切な労使関係の確保がなされてよい。

TTIP(環大西洋貿易投資連携協定、米国とEU〈欧州連合〉の間のFTA〈自由貿易協定〉で大西洋版TPP〈環太平洋経済連携協定〉といわれる)のような案件に関しては、事業者と同じように労働者と消費者の利害も反映されるべきだ。

公平性と効率を共に発展させることは可能

私の著作では、不平等を減らし貧困に対処するための提案を紹介している。それにはもちろん異論もあるだろう。

1つ目に、「公平性と効率のトレードオフ」は国民所得とその成長力を減じるものだと言う人もいると思われる。それに対して私は、そうした異論は現代の経済の仕組みをどのように理解するかに決定的に依存しているのだと答えたい。市場経済には多くの欠陥があり、公平性と効率を共に発展させることのできる状況があるのは明らかである。不平等を減らすことは経済のパフォーマンスを高めることと矛盾しない。

2つ目に、「グローバル化された経済において、国家は不平等の縮小などという選択肢を選べない」と言う人もいるだろう。それには、国家はただ単に世界の発展を受動的に受け止めるだけの存在なのではないと私は答えたい。一国の富の分配は、変化し続ける世界へ政府がいかに対応するかで変わる。

3つ目の異論は「私たちにそんな余裕はない」というものだ。確かに、身を切る選択をする必要もある。もし真剣に不平等を減らして貧困に対処したいと思うのならば税は引き上げられなければならないだろうし、どのように市場での所得が決定されるかについて再考しなければならない。

やるべきことはある。私たちは「何もできることはない」などと口にするべきではないのである。

(「週刊東洋経済」2015年12月26日‐2016年1月2日号〈21日発売〉より転載)

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