うろうろとする日々

荒木優太:サークル有害論(集英社新書)

題名からは想像がつかない内容の本でした。よい意味です。

小生のちょっとした興味は外山雄三氏に関してもですが、音楽家の”サークル”が存在していそうなので、そういった観点を論じたものがよみたいということです。

この本は鶴見俊輔氏のサークル論についてかなりの量が書かれています。鶴見俊輔氏の名前が全くタイトルに出てこないので、全く内容が想像つかないものでした。

鶴見氏の伝記的な内容にはどうもいろいろと語っていなかったり、意図的にニュアンスを変えていたり、まあそういうことがあるらしいということがいわれていて、べ平連の活動についてもちょっと実際はちがうんじゃないかということがあるようです。こういったことはなかなか例えば小熊英二氏などは触れない部分(彼はそれこそ大学に所属する研究者ですけが)なのですが、この本もそういった具体的なところへの切り込みは今一つという気もしました。そのあたりにもっと切り込んでもらえるとよかったんですが。

荒木氏にはぜひともこの続編を期待したいともいます。

荒木氏は在野研究者を名乗っていますが本当に大学に所属する研究者がどちらかというと日本ではある種サークルに所属することで職を得ているのではないか、というところへのアンチなのかもしれません。そういう意味ではこのサークル有害論はそういった日本の研究のあり方へのアンチテーゼなのかも知らないと思いました。

驚くのは本当に小さな某大学のようなところでも、なんと修士論文を副査の先生が落として修士号を取らせないということが起きて訴訟沙汰になっているらしく、昭和時代にはよく、激しく質問をした、というところまでは聞いたような気がしますが、落とすまでするのは令和の時代のこととも思えない前近代的な”サークル”なのだなあと。某大学は某宗教団体立の大学ですが、伝統宗教の凋落はこういったところにも原因があるのではないかと思わされました。それはカルトの伸長も意味しているので、そういったサークルの中での”研究活動”は社会のためになっていない、ってことです。

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