うろうろとする日々

新潮2024年2月号浅田彰氏のインタビューを読んで

浅田彰氏の構造と力文庫化を記念したインタビューが出た。

例えば現代思想に彼はもう何年かいていないのだろうか?(もしかしたら書いているのかもしれませんけど。見落としてたらすみません)なんだか文明評論家のような感じかなあと思います。

当然小生の世代にとってはニューアカブームというのはもう当時の高校生大学生を席捲していたわけで、それに乗っかったカタログ小説なるものもあったわけでした。とにかく当時の日本はバブルで洋書や輸入レコードなどが大幅に安くなってガンガンと入ってきて、そういったものが一般人にもアクセスできるようになった時代だったと思います。今の若い人には到底理解できないでしょうけどその前の時代は洋書を読むことも輸入レコードを聴くことも今ほど簡単ではなかった。そもそもレートが今とは全然違うので、なかなか手が出ない、ということでした。そこに登場した特に浅田彰氏は洋書を読みこなし、先輩の学者の誤読なども指摘して、かっこいい存在ということだったと思います。

ということでこのインタビューには大きな期待をもって読みました。

しかし、まあなんだかちょっと拍子抜けでした。

森毅氏との関係などが書いてありましたが、なるほどと思わせられたところです。

逆にいうと、森氏のようなスタイルである時代はOKだったのが、先ほど書いたように誰でも輸入書物にアクセス出来たり、今となってはYoutubeで映像が見られたりする世界で、おそらく日本の論文生産量なども大量に増えてくると、浅田氏のようなスタイルがなかなか難しくなったということかもしれません。

もちろん、彼の論評はいまでも受け入れられているので当然大学での職も続けているのでしょう。

ちなみにもう一人の代表選手であった中沢新一氏はそのあと意外な展開をしたという気もします。実は彼の田辺元についてのエッセイなどは小生は非常に重要なものと思っています。ただし彼は宗教学者ということでしたから、本当はもっとオウムの問題や今でいえば統一協会の問題などに発言してくれるといいのになあとも思うのですがどうなんでしょう。

また、さらに言うと当時の新人類の代表であった野田秀樹氏などは、今ではお子さんもいるご家庭をもって、なんだか一番過激に見えた劇作家が一番社会の中での収まりはいいように見えます。それはやはり、教駒ー>トーダイ法学部という高校からの違いなんでしょうか、、、最近の筑駒(教駒)すごい本みたいなのにも取り上げられていたように思います。ずいぶん前に目を悪くされてそのあともずーっと旺盛な意欲を持たれているのはすごいと思うし、当時の新人類で一番今社会的な影響を持っているということでは野田さんなのだと思います。

(女優3人?(公的だとおそらく)との変遷への羨望もある文章かな?小生は野田氏については、2番目の女優の方が書かれた本で書かれていた「いつも勉強している人」というのは本当にそうなんだと思います。教駒万歳本などには教駒の人は天才で勉強しない言っている人もいるようですが、やっぱりやることをやっている方々と思ってます)

ということで、最初に戻るとインタビューの中では現在の言論状況への発言などもあまりないし、アカデミックな世界への発言もないような感じで構造の力に文庫版あとがきがないことから、もう少し何かあるかなあと思ったのでしたがそれは期待外れでした。

実は小生はミーハーなので、戦場のメリークリスマスが出たときにAvecPianoというカセット本(若い方への解説:戦場のメリークリスマスを坂本龍一がピアノで弾いて、それに解説本が付いたものです)を買って浅田彰氏と坂本龍一氏の対談なども読みました。恐ろしいことにここで初めてグレン・グールドについて知りました。そういう意味では浅田彰さんに感謝しないといけないんでしょう。

また、小生が初期のCDで買ったものにポリーニのペトリューシカからの3楽章などの入ったCDがありますが、今回のインタビューでも自分はピアノはポリーニやアルゲリッチのレコードを聴いてやめたといっていて、そういった音楽への好みは浅田氏の書かれたいろいろによってきっかけを与えられているのでまあ小生にとっては構造と力以外のところで恩恵はありかという気もしてます。

ということでインタビューを読んで、自分の来し方を省みる時間を与えていただきありがとうございました。というべきでしょう。

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