小父さんから

ミーハー小父さんの落書き帳

TOKYO EYE 「建築のジェノサイド」に気付かない日本 Newsweek

2013年09月28日 | オピニオン
  


2013年09月10日(火)14時59分 Newsweek
今週のコラムニスト:レジス・アルノー
〔9月3日号掲載〕

 鎌倉を世界文化遺産に登録しないように──ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)がそう勧告したことを受け、松尾崇・鎌倉市長と黒岩祐治・神奈川県知事は会見で無念さをにじませた。

 鎌倉市当局は中世の都市としての「物的証拠が不十分」と指摘されたことを認め、私にこう説明した。人類の遺産として保護する価値があると世界に認めてほしいのは、鎌倉を取り囲む山々とその麓に点在する寺院や遺跡だ。そこに日本独自のサムライ文化があると自分たちは考えているが、イコモスにはその意図が十分伝わらず、「武家の古都」とする根拠が不十分だと判断された、と。

 黒岩知事は今回の勧告に「目の前が真っ暗になるような衝撃を受けた」と語った。こんな妥当な判断に衝撃を受けているようでは、知事の体が心配になる。そもそも県の誇る珠玉・鎌倉がじわじわ破壊されていることに気付かなかったとしたら、あまりに無自覚だ。

 シャネル日本法人の社長で作家でもあるリシャール・コラスは長年鎌倉で暮らし、この古都をこよなく愛しているが、あえてこう苦言を呈する。

「鎌倉の素晴らしい日本家屋の多くがこの10年ほどで姿を消した。良くてもあと30年で完全に失われるだろう。醜悪な近代的建築物の中に埋もれる大仏とわずかの寺社以外には、日本の古都の面影は消し去られ、鎌倉はディズニーランドのような作り物の観光地になる。だから、ユネスコは鎌倉の世界文化遺産登録にノーを突き付けたのだ」

■悲劇に気付かない政治家たち

 コラスは鎌倉で、地元の名匠たちの手になる伝統的な日本家屋を建てた。本来ならこれは日本人がやるべきことだ。

 鎌倉市当局は文化遺産を守るために最大限努力をしてきたと言う。都市計画や景観保全の条例を導入し、建物の高さや屋上の看板、外壁の色を規制するなど法的措置を講じてきた、と。

 だが、実態はどうか。実例を挙げよう。鎌倉市は地元住民の強い反対にもかかわらず、観光客が集まり、商店が軒を並べる由比ガ浜通りに葬儀場を建てることを許可してしまっている。

  
小父さんが見た京都の碁板の目ってこんな路地ばかりだった  


 美しい日本の街並みが急速に失われつつあるのは鎌倉だけではない。京都ではこの30年ほど、「建築のジェノサイド」ともいうべき暴挙が行われてきた。取り壊された町屋はざっと10万軒に上る。おまけに昨年には、憩いの場である梅小路公園の真ん中に巨大な水族館が建てられた。サンディエゴにあってもマルセーユにあってもおかしくないような水族館を、よりによってなぜ京都に建てたのか。

 東京はもはや暮らしやすい都市ではなく、「洗練された平壌」を目指しているようだ。まるで行進する軍隊のように超高層ビルが整然と立ち並ぶ都市である。私が住む新宿区富久町はかつては2階建ての家々が並び、木立が目をなごませる住宅地だったが、今では55階建ての超高層マンションが完成しようとしている。

 こういう建物を建てる会社の経営陣は、高層建築が規制されている田園調布のような高級住宅地に住んでいる。よその地域の暮らしや文化を破壊して、自分たちは優雅に暮らすというわけだ。

  
 ありゃ、ビルの向こうがあの世界遺産?(笑) 


 日本は「クールジャパン」と称して、独自の文化を盛んに世界に売り込んでいるが、独自の文化を本気で守る気はなさそうだ。今の政府は自国の伝統に誇りを持つことを旗印に掲げている。安倍晋三首相は「美しい国、日本」をつくると誓った。ならば、歴史的・文化的に価値ある地域を不動産開発から守るべきだが、政府はそうした努力を怠っている。

 このままでは美しい日本は跡形もなく消え去り、日本を訪れる外国人旅行者はがっかりするだろう。悲劇としか言いようがない状況だが、日本の政治家はその重大さに気付いていないようだ。


 Regis Arnaud レジス・アルノー
1971年、フランス生まれ。仏フィガロ紙記者、在日フランス商工会議所機関誌フランス・ジャポン・エコー編集長を務めるかたわら、演劇の企画なども行う。


  ※ジェノサイド・・・集団殺害を意味するが,語源がギリシア語のgenos(種族)とラテン語caedes(殺戮)の合成語であることから,ある国家あるいは民族(人種)集団を計画的に破壊するという意味で用いられる。ジェノサイドという語は,ポーランド人法学者レムキンR.Lemkinにより《被占領ヨーロッパにおける枢軸国の支配Axis Rule in Occupied Europe》(1944)の中で,ナチス・ドイツによるユダヤ人やジプシー等の迫害に対する非難を込めた言葉として初めて使われた。 (kotobank.jp) 





 読みながら、こうして写真を集めているといろいろと気づかされるね。小父さんも東京の摩天楼ばかりに目を奪われていた。ご指摘の北朝鮮のピヨンヤンにだって超高層ビルは建っているんだ!

 テレビで見たのかな?幕末の(1862年9月14日)生麦事件で殺害されたイギリス人チャールス・リチャードソンは、事件に会う前に本国に日本のことをユートピアのような国だと手紙を出していたと思う。そんな日本の形が今東京から崩れ落ちて行っているんだな。

 ニューヨークと並び称されれば「都会的だな!」と思われても「洗練されていても平壌(ピヨンヤン)」じゃー、何もない方がまし。いつの間にか、品位や文化水準の違いこそあれ、上海と同じような大マンション群の東京に人が押し寄せているのか。東京オリンピックの開催までにもっと加速するだろうね!
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4 コメント

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Unknown (ree)
2013-09-28 04:02:35
従兄が鎌倉に住んでいて、まだ娘が1歳前だからかれこれ10年前になりますが、従弟の結婚式で子供達を父ちゃんに任せてペルー人の親友を連れて日本へ行った際、彼女の希望で鎌倉のお寺などを回ったんですが、10年前と20年前とを比べても、平日でも八幡宮までの商店街は観光客で一杯になっており、鎌倉って静かな印象だったのが、すっかり賑やかに変わってしまってました。

そう言えば小父さんは江の電に乗った事がありますか?
なかなか雰囲気がいいんですよ~。

葬儀屋じゃなくて葬儀場ですか?
う~ん・・・必要なものではあるけれど、もうちょっと場所を選べばいいのに・・・と思いますね。
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小父さんへ (颯颯(さっさつ))
2013-09-28 07:09:11
最近、特に思うことは日本人は文化に対する造詣が薄くなってきたようです。
新発売のスマホやオープンしたショッピングセンターには殺到したり、流行や話題には敏感ですが、日本文化を学んだり、大事にする心が希薄になりました。
行政も軽視しているように感じます。
私は物見遊山的観光が嫌いで、特に人気スポットとなって、観光ナイズされ、ごった返す観光地にはうんざりしますね。
日本人は心のゆとり、豊かさが少ないのかなあ。
返信する
reeさんへ (小父さん)
2013-09-28 20:58:50
へ~っ、留守番の父ちゃんも大変でしたね!
冠婚葬祭は交通費がかさみますね。
でも、日本に戻られるいいきっかけですね。

>彼女の希望で鎌倉のお寺などを回ったんですが、

やはり、大仏と鶴岡八幡宮ですか!

ほう~っ、ちょっと前に、草刈正雄が「美の壺」というNHKの番組で鎌倉の町を紹介していましたが、とてもいいところだなと感じました。
素朴さが感じられましたね。
江の電もテレビでやっていたんですよ、家に接近したところを電車が走っていて、これにも乗りたいなと思ったわけです。

最近は葬儀場も大小どんどん建っていますよ。
我々団塊の世代が死んで行く頃には、斎条もお坊さんも足りなくって待ちがたくさん出るとかで、葬儀場も団塊の世代が終わる頃までは忙しいと思いますよ。
返信する
颯颯(さっさつ)さんへ (小父さん)
2013-09-28 21:10:59
>日本人は文化に対する造詣が薄くなってきたようです。

そうでしょうね~。
私自身反省するところです。

>日本文化を学んだり、大事にする心が希薄になりました。

いやいや、耳が痛いです(笑)

>行政も軽視しているように感じます。

ははは、アベちゃんはどうですか!
オリンピックでちょっと浮かれているような。
昨日か今日では「詭弁だー!」という活字もどこかに踊っていました。
まあ、日本のトップなんだから、しかも自民党を抱えているんだから・・・。
でも最大派閥の長、町村信孝氏も復興増税廃止に反発していますね。

>観光ナイズされ、ごった返す観光地にはうんざりしますね

はっはっは
私も富士山に一度は登ってはみたいものの、今は当分行きたくないですね。

なにしろ、人混みはどこでもいやです!
ゴールデンウイークなんてのは家にじっとしているのが一番いいです(笑)。
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