多感な青春時代
ひとりの少女に恋をした
初めて会ったのは高校三年の夏
清純で真っ黒に日焼けした顔で
ボクを迎えてくれた
家族ぐるみの優しさと
五右衛門風呂が懐かしい
黄楊のカフスボタンとベルトの土産
今でも色柄を鮮明に覚えている
宇高連絡船
おかあさんと一緒に見送ってくれた
テープの向こうに
「また会えるねー!」と叫んだ
でも 淡い恋は
時の流れとともに消えて行った
その時 書きためた恋の日記は
炎と消えた
二十二の時 また恋をした
一年付き合ってラブラブ結婚
家を出ていたおふくろが
一番喜んでくれた
それから三年して
ボクは人生の修羅場を掻い潜る
恋をし 結ばれ 子も出来た
家も買ったし 仕事も順調だった
一転! 妻がガンで入院
余命1ヶ月と言われ
主治医に見放された
亡くなるまでの四ヶ月
苦しく辛かった
でも 諦めなかった
そのときの記録は
今でも惜しまれるが
記憶は強烈だ
三十代のとき また恋をした
お互いの家族の葛藤は凄まじく
赤裸々な記録は 抹殺された
四十過ぎになって
転勤問題に直面
お袋とのこと 息子のことで
思い悩んでいた頃
うつ状態になって1ヶ月自宅療養した
ある日 身の回りを片付け始めた
鍵のかかった引き出しのノート
過去を抹殺するかのように
ボクは市の焼却場に向かった
深々としたドロドロの地獄に
ボクのドロドロした人生の記録が
黒いビニール袋とともに飲み込まれて行った
白い電気コード
首に巻きつけようとしたが
死ねなかった 死ぬのが怖かった
死んだりしたら息子たちにすまないと思った
妻がガンで逝った時
息子たちが大学出るまではがんばろうと
誓った言葉が そのとき蘇った
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