破戒できません。
春光煌めいて、当に釣り日和、いや別に昼間でなくとも、夜でさえ釣りに行きたくなる時期ですが、釣りには行けません。
「春のお彼岸に釣りに行く馬鹿がどこにいる!」
イッパシの大人になったつもりで恐いもの知らずの20代の頃、ヨボヨボの祖父にメチャクチャ怒られた。
「釣っても持って帰って来ないんだよ。釣っても逃がすんだよ」
「馬鹿たれ。同じだ。絶対に許さん」
お彼岸に祖父が本気だった。
親戚の前で20代のいい大人が、ガキ扱いで叱責された。
以来、お彼岸はお中日に限らず前後3日は釣りに行った事がない。
いや、行けない。
春のお彼岸に湾岸線から海が見えた。
「今日は人がいないから釣れるだろうな」
「魚も今日は安心してエサ食べ放題だな」
毎年、同じことを考えています。
「理屈ではない。ならぬことはならぬ」
「じいちゃん、今年も戒律守りました」
春の日射しに東京湾が輝いていた。