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たゆたえども沈まず / 原田マハ

2024年06月07日 | 読んだ小説
                    

(名作、傑作、秀作
19世紀末の華やかなフランス美術界を舞台に、日本の浮世絵をフランスで売り込もうとする美術商の林と
助手の重吉。 そして、無名画家のゴッホと彼を支える弟の美術商のテオ。 この4人を中心にした史実
とフィクションを織り交ぜた物語で、ゴッホ以外に、美術商の林と弟のテオも実在の人物らしい。

私は、ゴッホの事を世界的に有名な画家として名前しか知らないし、絵画を見るのは好きだけど美術界
には興味が無いから、ゴッホの史実が多少歪曲や創作されていても分からないし、物語自体が面白けれ
ばいいと思って読んでいた。

それで、カバー裏の紹介文に「読み始めたら止まらない」と書かれてあったけど、何か小難しそうな
フランス美術界の話で、それはないだろうと思っていたが、本当に本当に面白くて読み始めたらページ
を捲る手が止まらなくなった。 何か昔読んだシドニィ・シェルダンの「ゲームの達人」を思い出した。
まぁ、流石にあそこまで眠るのを忘れるほど夢中になるという程ではないのだが。 

何でこんなに面白いのか考えてみたが、
①読み易い文章である。 ②主要な登場人物が上記の4人しかいなくて分かりやすい。
③ゴッホの史実通りではなくて脚色、創作されているので面白みが増した。 
④物語の中心でのヒロインが登場せず、テオの結婚以外しょーもない恋愛話が盛り込まれていない。
これらの事が、面白さに繋がっているのかなと思われる。

そんなに骨太で深い内容ではなく、話のテンポがいい分、4人の人物の掘り下げも足りず内容的には薄い
と思うが、それでも私のようなゴッホの名前しか知らなくて、絵画の技術的な知識もなくて、美術界に
何の興味もない者が読んでも、数年に一冊めぐり逢えるかどうかというくらいの大ヒットだった。 
惜しむらくはタイトルが意味不明で、本屋等で見てもスルーされそうな気がするのがとても残念だし、
作者が男性なのか女性なのか、ちょっと分からないというのも損をしていると思う。 かくゆう私も、
何年も前から幾度となく本作を見かけていたが、まったく手に取ってみようという気にはならず勿体ない
事をしていた。 こんなに面白く最後は悲しい兄弟の結末に涙する小説は多くの人に読んでもらいたい。 
それくらい面白かった。


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