今月12日にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊氏が逝去された。小柴氏と言えばカミオカンデ、スーパーカミオカンデ建設推進の立役者で、この施設により初の太陽系外(大マゼラン星雲)からニュートリノの観測に成功された。
カミオカンデでは1000本の光電子増倍管を、スーパーカミオカンデでは11,200本、ハイパーカミオカンデでは99,000本の高感度センサーを使用するという。受光面が50cm径という巨大センサーをこれだけの数だけ並べて水に浸すという、何と言う力業だろう。これだけ科学の発達した現代でもこの力業が無ければ観測できないものが有るという事実で、逆に宇宙の巨大さと自然の奥深さを実感する。
ここで使用された光電子増倍管は光学関係者では知らない人はいない”浜松ホトニクス社”製で、よくもこれだけ製作するキャパシティが有ったものだと驚く。
実は大学時代に研究室でこの浜ホトの光電子増倍管を使用していたことが有る。3cm径前後の映像面からみる緑色の光の痕跡が何とも美しかった。
確か当時これを1本購入するのに20万円だったか200万円だったかしたと聞いた記憶が有る。
カミオカンデではこの100倍以上の受像面積をもつ増倍管を浜ホトの言う1本30万円の価格(これでも破格の価格だと思うが)に対して小柴氏は13万円まで値切ったという逸話を聞いた。浜ホトにとっては殆ど慈善事業に近い状況だったのではないだろうか。
この力業大型プロジェクトに当たって、予算などさぞ大雑把で、言い値で購入したかと思いきや、別の意味の力業が有って初めて成しえた偉業で有ることは感慨深い。
●火星(11月15日20h~ 30cmGOTO 600倍)
薄い雲があるなか小さくなりつつある火星面。
相変わらず筒内気流が発生していて数枚撮って撤収。数日放射冷却と対流について考えていたが、30cmGOTOタイプのような一部開放型のニュートン式の場合、かなり対策が難しい。シュミカセと違い光路が90度曲がった後の斜鏡から接眼レンズ付近が最も筒内気流に敏感なエリアではないかと考えている。眼視の場合この付近の人体による輻射とそれによって引き起こされる対流(乱流)がかなり観測像に影響を与えるのではないだろうか。全開放型のトラス構造を持つ反射望遠鏡であれば問題がないのかまだ考えてみたい。
●火星(11月21日20時~)
かなり冷え込んできた夜で、上空の大気はかなりのスピードで流れている。筒内気流を層流化できるかどうかのまずは手始めの実験として、ファンを様々な場所から強さと方向を変えて筒内気流の様子を観察してみた。結果は何も傾向が掴めずじまいで終わった。気流が安定しないまま映像を数枚撮って撤収。まだまだいろいろ考える必要がありそうだ。
今日は火星面でも風が舞っているようで、爪がみえない。