1976年は五藤光学にとって創業50周年ということで特別な年だった。
MARK-Xはこの年に発売されたのだが、この年の五藤研究所のMARK-Xに関する広告・マーケティングは過去にも先にも例のない特別なものだった。 当時の天文ガイドをみると毎号広告出稿内容が違っていて、それだけでも力の入れようが分かる。当時読者であった私は、この広告に心躍った内の一人であった。
ブログ立ち上げ当初からその様子を振り返ってみたいと思っていたがようやく公開にこぎつけた。
まずスタートは1976年1月から。
この天ガの発売日は1975年の12月5日である。 内容は驚異的な色消しレンズが完成した記念に1975年の12月年末、五藤光学敷地内で一般ユーザを招いて、カールツアイス等他社屈折望遠鏡との比較観測会を開催するというものだ。
1976年2月号、3月号
4製品の発売告知(価格は3月号で発表)
1、三枚玉スーパーアポクロマート付8cm赤道儀(350,000円)
2、蛍石使用二枚玉スーパーアポクロマート付8cm赤道儀(400,000円)
3、新種ガラス二枚玉スーパーアポクロマート付8cm赤道儀(300,000円)
4、マクストーフ反射鏡10cm写真用及び特殊赤道儀兼用機(295,000円)
3月号では価格情報のみ明らかになったが、その他の詳細内容に関してはわからない。仮に分かったところで、価格レンジ的に全く自分には縁のない製品として映っていた。
因みにこの価格、現在の8cmに比べても極めて高価だが、これは1973年から始まったオイルショックによるものだった。
オイルショック前の一般ユーザ向けの最高級天体望遠鏡と言えばニコン8cm屈折赤道儀で、89,500円、次いで五藤光学の8cmが87,000円だった。高価だが、価格は高値安定だったこれら望遠鏡がオイルショックを迎え一斉に値上がりし、1976年時点で、ニコン8cmが265,000円、五藤8cmが195,000円になっていた。今考えてみても凄まじい値上がり率で、当時お小遣いをコツコツ溜めて天体望遠鏡を購入する夢を抱いていた学生天文ファンは大きく失望したはずである。トイレットペーパー騒ぎが起きていた頃、天文ガイドもひと月ごとに価格が変動していたことを覚えている。
1976年4月号
4種類の新望遠鏡群の登場を待ってこの号ではじめてMARK-Xが発表された。 見開き2ページ×2セット+背表紙を使用した思い切った広告展開をしている。 前編広告では昨12月に続き、2度目のユーザイベントの告知で、前回同様の他社製品との比較、マークXコーナーや蚤の市も催されるという内容。後編2ページ広告では(マークX)システムの詳細を説明。
4種類の新望遠鏡群の登場を待ってこの号ではじめてMARK-Xが発表された。 見開き2ページ×2セット+背表紙を使用した思い切った広告展開をしている。 前編広告では昨12月に続き、2度目のユーザイベントの告知で、前回同様の他社製品との比較、マークXコーナーや蚤の市も催されるという内容。
1,ユニットタイプのシステム・マウント
2,観測装置取り付け版
3,高精度極軸ファインダー
4,ユニット毎の価格設定 等の説明で、外観が明らかにされたが価格に関しはいまだ未発表だった。
1976年5月号
この年の五藤光学のマーケティング戦略はとことんユーザに寄り添うことを目指した特別なもので、2度の観測比較会に次いで、望遠鏡機材の懸賞付きのアンケート調査も実施している(前編見開き2ページ)。ただ希望価格や口径等を尋ねる簡単なもので、あまり期待できるデータにはなりえなかったと思う。
後編見開き2ページではマーク-Xのシステムダイアグラムを提示。左ページ下段に小さく各パーツの価格表が掲載されていて、8cm用マーク-Xの赤道儀セットを改めて計算したところ91,000円。鏡筒価格は光学レンズにより171,000~271,000円の幅が有る。8cm赤道儀で26万円~36万円と、現在の価格にしても高価な部類で、まだ購入に対しては現実味を持てず、興味は湧かないままであった。モータードライブは63,000円と今現在でも購入をためらう値付けがされていた。光学部品製造や鋳造に関してはノウハウがあるが、電子機器類の開発・製造に関しては他の天体望遠鏡メーカ同様割高感はいなめない。
1976年6月号
2枚玉セミアポ価格を発表。アイピース3本、格納箱付で139,000円。
従来の同口径の半分以下の値付けとかなりアグレッシブな価格付けで非常に魅力的。従来の流通チャネル販売ではなく直販により中間マージンを排除。
五藤光学の広告としては且つてない程の饒舌な文言でユーザにアピールしており、自信のほどがうかがえる。
後半の広告では、1ページをQ&Aに費やしている。
マークXを購入ターゲットとして意識し始めた号となった。
1976年7月号
第2回比較観測会に寄せられたユーザの声を広告ページでピックアップ。139,000円の特価は50台限定と発表あり。
後編広告では観測装置取り付け版をピックアップ。パーソナルサービスとして架台へのnameの刻印サービスを告知していたことを今回初めて知った。
1976年8月号
比較観測会で寄せられた賛辞集の無料提供開始。8月再度の比較観測会開催の通知。
1976年9月号
五藤光学50周年らしく20cm屈折赤道儀納入例を見開きページで紹介。
後編広告はマークXファミリーとして新たに12.5cm反射望遠鏡をフィーチャー。 五藤光学のパラボラ鏡、工具を必要としない光軸調整装置、耐食アルミニウム合金でできた鏡筒等魅力的ではあったが、その当時自作の15cm反射経緯台がようやく稼働にこぎつけ、これはスルー。
1976年10月号 50台限定とうたっていたキャンペーンだったが、数百台の注文が殺到したらしく同年12月末までキャンペーン延長を本号で告知。 同時に全国の天文同好会向けに8台のモニター募集も行われている。
前編見開き広告では、賛辞集の一部抜粋が全ページを覆っている。後編の見開きページではきめ細やかな新工夫として、以下のポイントを詳細に説明。
1,新デザインクランプレバー
2,バランスシャフト
3,極軸望遠鏡
4,ターンバックル
5,新微動ハンドル
6,石突
これらを広告と分かっていながらも何度も何度も読み返し、いよいよ欲しくてたまらなくなってきていた。小遣いが少し溜まると引き伸ばし機やアイピースなど小物購入にあててしまっていた当時、節約しながらマークX購入を意識しだした頃だ。
1976年11月号
10月号のこだわりポイントに続き、
7,マウンティング材質の改良
8,大型機と同等のウォームの保持機構
9,各ユニット接続部分に超硬質ヘリサート・スクリューの埋め込み
を言及。
何故かはわからないがマーク-Xの原寸大図面のプレゼント募集。 いいよキャンペーンも大詰めを迎える。
キャンペーン終了で、新価格が気になっていたが、2月号で新価格がアナウンスされる。
1977年3月以降、五藤光学のマークX販売促進も峠を越えることになる。
1976年12月号
何故かはわからないがマーク-Xの原寸大図面のプレゼント募集。 いいよキャンペーンも大詰めを迎える。
1977年1,2月号
2枚玉セミアポ一式が139,000円から155,000円(新たに鏡筒入れ木箱標準装備)、3枚玉アポ一式が190,000円から199,000円(新たに極軸望遠鏡標準装備)と、大きな値上がりが無くほっとしたものだ。1977年分からは三脚がアップグレードし、更に頑丈なものへ。
1976年の1年間は各号一度として同じ広告内容で済ませること無く、読者として五藤光学発信のコンテンツとして楽しめた。
最終的に1977年の秋頃に念願の8cmマークXホルダーになった。