ぐだぐだくらぶ

ぐだぐだと日常を過ごす同級生たちによる
目的はないが夢はあるかもしれない雑記
「ぐだぐだ写真館」、始めました

荒野の塔

2010年05月31日 22時56分07秒 | 小説
広大な荒野の真ん中に、

巨大な塔が立っていました。



殺伐とした荒野の中で、

塔は異様な雰囲気を放ち

天を貫く槍のようにそびえ立っていました




その塔の根元には、

塔に向かって大きな斧を振るって

塔を崩そうとしている人がいました

頑丈な塔の壁が斧で崩せるはずもなく

塔には傷一つ付けられていませんでした



その人は、

いつから塔に斧を打ちつけているのか、

なぜ塔を壊そうとしているのか、

もう覚えていませんでした

気がつくと、この天突く塔の横で

自分の斧が響かせる高い音を聞いていました



ふと何かを思い立ち、

その人は斧を振る手を止めました

しかし、すぐにまた斧を強く握り、

壊れることの無い塔の壁に打ち付け始めました




塔の中腹では、

窓から一人の少年が顔を出していました

塔の中にあるパン切れをほおばりながら

遠くを見つめていました



少年は、塔の外に出たことがありませんでした。

物心ついた頃には、

もう塔の中腹の部屋で生活していました

あまりに高すぎる塔の真ん中で、

頂上まで登ることも

下まで降りることもできませんでした



少年は遠くを見ながら、

何かを考えていました

しかし、手に持っていたパンが無くなると我に返り、

窓際から姿を消しました




天をも見下ろす塔の頂上、

一人の若者が屋上に上り

遥か下に広がる荒野を見下ろしていました

目もくらむような景色に臆することもなく、

不安定な塔の屋根の上に座っていました



若者は、この塔から出たいと思ったことがありました

荒野の果てに思いを馳せ、

この屋上にやってきました

しかし、屋上から見えた景色は

地の果てまで続く荒野だけでした



若者は、再び屋上に上り

どこまでも続く荒野を眺めました

前と同じ平凡な景色に溜め息をつき

地平線の先をいつまでも見つめていました




その地平線の果てを、

一人の青年が歩いていました

歩いても歩いても終わることの無い荒野を、

ただひたすらに歩いていました



彼は、塔の近くまで来たことがありました

そこで暮らすことも考えました

しかし、単調に伸びる塔をしばらく眺めて

また歩き始めました



青年はふと立ち止まり、

足元に目を落としました

そこには、透き通るような蒼色の

小さな花が咲いていました

青年はそれを見つけて微笑み、

また荒野を歩き始めました

最新の画像もっと見る

コメントを投稿