◇肉体のエリート、タキミカさん◇
帯表紙のこの女性、毎日TVで見ない日はないほど有名な、
90歳のスポーツインストラクター・タキミカさん。
身体の線をピッタリなぞるフィットネスウェアー姿で、
若者がこなす複雑なプッシュアップや重いバーベルを上げる。
初めて出演のCMを見た時、
タキミカさんは<肉体のエリート>だと思った。
90歳と言えば、バリバリの高齢者。
着替え、食事、トイレ、お風呂、
移動もすべて人に頼らなければならなくなる年令。
大半の人は、施設にお世話になり、
時空を超えた世界の住人になっている。
なのに
タキミカさんは自分よりずーーーーと若い人たちに、
肉体のエリートへの道筋を教える日々。
口角をギュと上げ
「年令は ただの数字ですよ!」と、事も無げに言い切る表情は、
<内面のぶっとさ>を感じさせる。
第二の人生は、社会から退く時から始まり、
親の介護・自分の病気・金銭的な問題が
次々と障害物レースのように立ちはだかる。
そこでようやく
ツルツルでピカピカの道を歩めないのが、人生なんだ、、、と
気づかされる。
誰もが、
ざらついた人生を懸命に乗り越える運命を抱えているのだと。。
ただ、それぞれの運命の分岐点があり、
年令を言い訳にせず
肉体を歓ばせるホルモンを出すことを学んだ人は、
心の沼のコントロールが巧くなる。
そのうえ
運動で筋肉を維持すれば、太りにくくなり、
免疫力もなんとか保て、鬱にもなりにくい。
一石二鳥どころか、一石六鳥。
長ーーーい第二の人生をざらつきながらも、肉体の衰えを騙し騙し、
ピンピンコロリと締めくくれる、、と。。
だが、タキミカさんの言葉は、
日々、ささやかな筋トレを欠かさずやってるワタシには、圧迫感があった。
それは
自分と真正面から向き合ってる人が漂わせる、迷いのない太さ、、
何というか、恐怖心が見えない。
これに関しては、
どう足掻こうが埋められないモノだから、
ワタシなんぞは、怖さゆえ、ニコニコしながら筋トレをしている。
心の問題から見ると、
タキミカさんとワタシでは天と地の差がある。。。。
なぜこんなに怖いのかというと、母のアルツハイマーが大きい。
多分ある瞬間までは、、
ずーーーーと大きな怖さを抱えて生きるのか…
この根っこは、ほぐれることはないだろうと思っていた。
この本に出合うまでは・・・
◇村田喜代子「エリザベスの友達」◇
初音さん、97歳。
認知症が進み、
その瞳はナニを見、なにを思っているか、家族すら分からない。
二人の娘が施設に来ても、娘という認識もないまま時間だけが過ぎ、
天寿を全うする瞬間を待っている。
初音さんの肉体は枯れ木のようになり、今を生きておらず、
彼女の魂は二十歳の新妻で、
第二次世界大戦前から暮らしていた天津租界にいる。
色白でほっそりとしたお人形の様な愛らしさ。
世界が戦争に明け暮れる中、
イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・アメリカ・ロシア・ベルギーなど
各国の美しい貴婦人がティーパーティや競馬を観戦したりと、
天津租界だけは、時間も感覚も違った。
初音さんの租界での名前は、サラ。
時空を超えた場所で、初音さんは幸せと不安を抱えて生きている。
この物語を読んでる途中から、もつれた我が母の記憶が重なった。
母も初音さんと同じように、若く綺麗だった頃にいて、
波乱万丈で女盛りの激しい生き様は、跡形もなく消え去り、
今は、順風満帆の平凡な人生を生きている。
そのことが理解できず、底なし沼の負の連鎖のように思え、
苛立ち、
母のいる時空に寄り添うことを嫌った。
ざらついた多くの時間を乗り超え、
やっと穏やかな時空に辿り着いたのだという事実を
認めていないワタシに気づいた。。
自分が、
肉体のエリートになり、運命のエリートになるか。
もしくは
「エリザベスの友達」になるかは、解らない。
ただ
この本がくれた真実は、怖さを直視出来た手応えがあった。
そして
コロナ渦が終息したら、母のアルバムを持って会いに行こうと思う。
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