録画で、ドラマ「アンチヒーロー」(TBS)の最終回を観ました。燕のはなしばっかり書いていましたが、今期で一番面白かったドラマはこれでした。
長谷川博己演じる明墨正樹弁護士が、12年前に起きた殺人事件で死刑判決を受けた男の冤罪を晴らすべく闘うストーリーです。
冤罪を晴らすというと「エルピス」を思い出しますが、あちらはもう少しドキュメンタリータッチで、終わり方もちょっとモヤモヤしつつ地に足のついたものでした。
こちらはエンタメ色が強くて、初回でダークヒーローか?と思わせといて実は…という掴みが非常に上手かった。
ロングコートの立ち姿がかっこいい長谷川博己のたたみかける一人弁論大会にぐいぐい引き込まれながら、若手弁護士の赤峰(北村匠海)の視点から真相を小出しにしていたのも巧みな構成だったと思います。
■正義感は悪と紙一重
冤罪の証拠を隠蔽した検事正、野村萬斎の怪演も見ものでしたが、やはり最終回で反撃に転じたところは追撃熱弁する長谷川博己の独壇場で眠気も覚めるってもんでした。
けれども、「半沢直樹」みたいに土下座させるとか、徹底的に相手に屈辱を味あわせることまではしていませんでしたね。それは、この作品のつくり手の正義、矜持だったのではないかなと。
それは明墨弁護士が、「人を裁くのは快感ですからねえ」と皮肉のように言ったセリフに表れていました。
誰もが持っている懲罰感情、悪い奴、嫌な人間には制裁がくだされるべきという気持ち。
それが法の番人が間違いを犯した理由の一つなのだから、実に扱いが難しい危険な感情なのだと、観ている者にも釘を刺す一言だった気がします。