花日和 Hana-biyori

分娩室で子供とふたり

6月14日(火) #3 この足だ間違いない
深夜2時くらいでやっと子供の処置が終わって夫に電話してもらった。私は「産まれたよー」と言ったかどうだったかよく覚えていないけれど、電話口で看護師さんがわざと赤んぼを泣かせて夫に泣き声を聞かせてくれた。夫に「よく頑張ったねえ、かわいいねえ」などと言われて嬉しかったけれど「面会は明日の朝8時以降だって」と連絡事項を言わねばならずあまり浸ってもいられなかった。

改めて赤ちゃんの顔を見て、ガッツ石松みてえだな、と思った。産んだといってもまだかわいいとか喜びとか全然わいてこなくて、ただ足の指の形が私にそっくりで足をすごくばたつかせて動くので、これだ、これが(お腹に)入ってたのは間違いない!と思った。

しかし出産というのはつくづく大股開きで痛みに耐える作業だ。その後もそんな耐える処置がいくつかあり、早く楽な所で寝たいとばかり考えていたけれど、そのままの姿勢で2時間動いちゃいけなくて赤んぼと二人っきりで分娩室にいなくてはならなかった。
「お母さんも少し寝な」と言われたけれど、こうこうと明るいし赤んぼは泣くし、泣いても何もしてあげられないのがまた切ない。(少し足をさわったりしたけれど)でも寝ようかなと思って目をつぶると機械の音がうるさかったりエライ暑かったりで寝られたもんじゃなかった。
泣き顔でも見ていると可愛いけれど寝たい所で泣かれるとやっぱりうるせーなーという感じだった。

結局4時になって病室に移動した。
でもその後も暑くて傷がズキズキチクチク痛むので寝られなかった。

子供を産んだ実感はまだ全然わかなかった。自分の意思とは関係なく痛みがきて小さめのボーリングの玉みたいなものがゴゴゴと下に降りてくる感覚があった。産んだというより私の身体を介してこの世に出てきたひとつの生命体、という感じがしていた。
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