昔どこかで聞いたお話です。。
大東亜戦時中、陸軍で兵隊だったおじいちゃんの話です。
おじいちゃんが小学生の頃、学校の裏山を少し登った広場でよく遊んだそうです。
ある日、その広場で日暮れまで遊んでいて暗くなり始めたので帰ろうとすると、
広場の隅に子狐が何匹か顔を出したそうな。
狐など珍しくもない田舎でしたが、とても可愛いので、
その時持っていた黒砂糖の欠片をあげてみたそうです。
しかし近づくと逃げるので、そばの石の上に置いておいた。
それから何度か似たような事があり、
子狐も近くまで寄ってくるようになりましたが、決して手からは食べなかったそうです。
おじいちゃんも上の学校へ進学し、その子狐のこともいつしか忘れてしまっていました。
時は流れて、おじいちゃんは陸軍に入隊。
そして支那へ。
ある日、隊を率いて川沿いに進軍していた時のこと。
側面から明らかに優勢な敵の攻撃を受けて川と敵に挟まれるような状況になってしまった。
川上、川下にも敵に回り込まれ、川を渡って後退する以外に道が無く、
川幅と水深が結構あるので、川を渡る際に狙い撃ちとなって全滅してしまう恐れが。
進退極まってしまった。
最初に頭に浮かんだ事は、惨殺された味方の兵士の姿だったそうで、
全員決死の切り込みを考えたそうです。
その時、敵の方を見ると、ちょうど敵と味方の中央に狼が1匹こちらを向いて、
ちょこんと座っている。
銃弾飛び交い、とてもその様な状況の場所ではないのに・・・。
良く見るとそれは狼ではなく、金色の綺麗な狐だったたのです。
そして次の瞬間、その狐が2mほど跳ねたかと思うと、パッっと尾が数本に別れた。
近くの兵士もそれを見て「うわぁ~」っと騒ぎ出した。
狐は分かれた尾から大量の火の粉を振り撒いて、敵と味方の間を走り始めた。
乾き切った枯れ草が凄い勢いで燃え始め、煙と炎で一面を埋め尽くした。
これ幸いと、部下に渡河命令を出し、おじいちゃんは最後に軍曹と川を渡った。
川を渡って追っ手を狙い撃ちにすることとしたが、敵はこなかった。
煙も薄れた対岸を双眼鏡でくまなく見るものの、姿はすでになく、
部下と一体なんだったのかなと顔を見合わせた。
この世の物とは思えなかったので、部下と対岸に手を合わせて心の中で礼を言うと、
おじいちゃんの耳元で誰かが囁いた。
聞いたことの無い若い女性の声で、
「美味かったぞ」。。。
戦後、その広場の一画に小さなお稲荷さんの祠が出来たそうです。。。