はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 66

2012-07-03 02:22:32 | 【Gravity Blue】
「海は、今日、ここに来るまで、この運命をまったく知らなかった。
青木家の長女として、日本で暮らす自分だけが、本当の自分だと何の疑いもなく思っていた。
それは、当然のことだと思う。

青木家に来たのが、2歳の時だったから、その状況がわかるはずはないし、
記憶として残ることもほとんどないと思う。
ただ、彼女の中に、この教会のことだけは、辛うじて記憶の断片として引っかかっていた。
教会が、自分にとってどういう存在なのかはわからないけれど、
何かの意味はあると感じていた。
空さんも、海から聞いたかもしれないけれど、
今回の彼女の旅は、その教会の意味を求めてのものだったの。」

「ブリスベンの教会・・・」
海がその話をしてくれたのを、ぎりぎりの状態で思い出して呟いた。
「そう。でも、その教会を見ただけでは、何も変化はなかった。
けれど、その後で、空さんに出会えた。
その出会いと同時に、ここに戻って教会の意味を知り、
すべてを知ることになる運命が回り始めた。
あとは、彼女が、いつ、それに気づくかという問題だった。

そして、その時は、今日。
この教会を20年ぶりに見た瞬間だった。」
「そうだったのか・・・。」
あの時の変化の原因を、今頃理解して、後悔した。

「多分、お母さんのいっていた、フラッシュバックが起きたんだと思う。」
「きっと、そうでしょうね。」
泉を見ながら、静かに言った。

「そして、すべてが繋がった。
空さんから聞いた生い立ちの話に、彼女自身が登場人物の一人として存在していたことを。
でも、それだけでは済まなかった。
なぜなら、彼女はそれを知らずに、ひとりの男性として空さんに惹かれてしまっていたから。」