Gravity Blue ６８

どうして、ブリスベンに戻ってきたのだろう。

この教会から、これまでの運命の扉は開いたのだろうか。
きっと、そうなのだろう。
だから、今、ここに、こうして戻ってきたのだろう。

いや、それもこれも、すべてが、単なる偶然の積み重ねなのだろう。
そして、今、ここに、こうして戻ってきたのも、単なる偶然のひとつなのだろう。

こんなにも広い世界で、
こんなにも素晴らしく、
こんなにも苦しい出会いができたこと。

それが運命だろうと、偶然だろうと、
そんなことは、もう、どうでも良い。
到底、人間の頭では、追いつけないのだから。

究極などというものが、この世の中にあるとは思わない。
でも、それに近いものが彼への想いであることに、揺るぎはない。

兄であること。
恋人であること。
それらを超越した唯一無二の存在なのだろう。

それは、肉体から離れた精神の繋がりなのだろう。
それこそが、愛なのだろう。
言葉や行動では通じ得ない、無形の真実なのだろう。

愛を充実させるための前提を、同空間での共存と捉えていた、ほんの少し前までのわたし。

でも、今は。

それは、時空という絶対的な概念のように考えられているものとは同一線上にない、
完全に独立したものと思うほかない。