言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

夢の森

2020-08-10 09:04:31 | 言葉






夢の森で
シロヤナギの声を聴いた

細い葉が
陽を浴びて薫り
しゃらしゃらと擦れあう
あのしずかな囁き

なぜわたしは
あの場所に行ったのか

何を思って
大木の腕の下に立ったのか

夢の森は
胸の内にある問いには
何ひとつ答えなかったが

とにかく
話したいことが
たくさん たくさん あるのだ

二百年以上生きた
おまえとしか話せない
さまざまな事柄について

たとえば

誰にも話せない
ひとりでは抱えきれない
うつわからあふれ出る哀しみについて―


夢の森で
シロヤナギの声を聴いていた

その森には
ただ一本の大木があるだけの

けれどもそこは
たしかな森であり

わたしにとっての
大きな おおきな 隠れ家であった












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