とある北国の公園にある
ベンチにぐるぅりと囲まれた大木が
いつも辺りを見渡している
春には 枝先のいのちが膨らみ薫りはじけて
夏には 陽光を受けた葉がシャラシャラ笑い合う
秋になると いのちの欠片がハラリハラハラと降りつもり
冬が深まる頃 その幹や枝は血管のように空に張り巡らされる
晴れの日も曇りの日も
雨の日も雪の日も
大木は人々のこころを撫ぜるように
やわらかな風をはしらせて
抱えきれない孤独をさらい
こらえきれない涙を拭ってくれる
上を向けと言わんばかりに
葉擦れ枝擦れの音を鳴らす
大木は
そのからだとこころで
何を感じてきたのだろうか
わたしたちには
到底想像もつかないほど
長い ながい 年月の中で
一幅の絵画を思わせる
血管のすき間から見える空が
瞳の奥深くに焼きついた
目をとじれば聴こえてくる
二百年越しの声
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