今回の記事は山崎豊子の名作「白い巨塔」について。
言わずと知れた名作であり、今回の記事では内容についてはあまり触れないですし、内容は知っている前提で書きます。
白い巨塔はよく医学部の権力闘争的な視点から語られますが、ここでは文学作品であるという視点から簡単に書いてみます。
勝手な私の考えですが、文学作品は人の心をよく反映したものでなければならないと思っています。
人の心は、一つの側面から語ることは出来ず、一見すると悪いように見える人の心にも善いと思われるような側面があるもので、逆もまた然りです。
それは悪人は最初から最後まで悪であり、善人は最後まで善であるという勧善懲悪的な価値観からはかけ離れているとも言えます。
「白い巨塔」において醜い権力闘争として描かれるその世界は実は人の心を反映したような、善いところも悪いところも包括しているような世界だと思います。
権力欲にまみれている財前もそうであり、その背景には母親想いの側面など、さまざまな善いと思われるような人の心を持っています。
一見すると悪であるかのような人物の裏の善の部分、またはその逆の部分などをしっかりと描ける作品が文学作品であるという考えに立つと、この「白い巨塔」はやはり文学作品です。
単に大学病院における権力闘争を描いているからだけではなく、しっかりと「読ませる」作品になっているが故にこの作品は語り継がれる名作なのだと思っています。
では、今回はこのあたりで終わりにします。
今回も、読んで下さりありがとうございました。