クランクシャフト修正完了
突然・・・から1ヶ月。
先日試運転を済ませお盆休み中に修理完結。
TOYOTAさんからは8ページに渡る詳細な報告書を提出頂き、こちらも気持ちよく承諾。
今回はこの報告書を皆さんに見て頂こうと思います。
ド素人にも分かりやすく行程順にまとめられ結構な力作です。
この報告書を見ていただければ、機械の精度について少しでも理解して頂けると思います。
なお・・・
注1:A3サイズのページを分割して掲載してます。
スキャナー取り込みですので少々見づらいところがあるかも知れませんがご了承下さい。
注2:活字はほぼ原文を打ち直しています。(一部補足あり)
では 『HBDI様、エンジンクランクシャフト修理内容説明』 をご覧下さい。
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1ページ目 【クランクシャフトの取り外し】
①トランスミッションを降ろしてエンジン本体を後ろから見た状態です。
エンジン本体は降ろさずにこの状態でオイルパンなどを外していき、クランクシャフトを取り外しました。
②取り外したミッションです
③シリンダブロックを車体側に残しクランクシャフトだけを外した状態です。
こちらは車の前側から
こちらは車の後ろ側から見た状態です。
④オイルパン内部の状態
多走行距離の割にはオイルパン内部は綺麗な状態でした。
通常ならオイルパンの底にスラッジなどがヘドロ状に堆積しているのですが、堆積物はほとんど見られませんでした。
2ページ目 【クランクシャフトの損傷状況】
⑥クランクシャフト先端の損傷部と関連部品
クランクシャフト先端部
矢印部と白波線部は勘合部です。クランクプーリとの勘合部で摩耗損傷があります。
カムシャフト用のタイミングギヤ勘合部摩耗損傷
タイミングベルトプーリ背面のクランクシャフトとの当たり面摩耗状態
・取付状態
・プーリーを反転した状態
3ページ目 【クランクシャフト修理前の点検】
⑦クランクシャフト先端部の振れ点検
(摩耗傷付きで荒れているので振れ測定できず。しかしダイヤルゲージの指針の読みは0.07mm程度なので修正可能と判断)
⑧クランクシャフトジャーナル、クランクピンジャーナルの軸径を点検測定
エンジン修理書のように各箇所を測定
キズや変摩耗はまったく無くジャーナル外径は
・クランクジャーナルNo.1~No.5まで全箇所 56.990mm (基準値:56.985~57.000mm)
・クランクピンNo.1~No.4まで全箇所 50.490mm (基準値:50.488~50.500mm)
・だ円度、テーパー度は全て 0.0mm (限度:0.02mm)
(No.1はラジエータ側~No.5 はミッション側です)
上の絵がクランクシャフトジャーナル(クランクシャフトの軸受け部)
下の絵がクランクシャフトピン (コンロッドの軸受け部)
⑨各軸受け部のメタルも再使用しても問題ない状態でしたが、No.5のジャーナルメタルだけ少し深いキズが入っており念のためこれだけ交換しました。(右端がNo.5です)
4ページ目 【クランクシャフトの修理】
⑩折れ込んだクランクプーリセットボルトの取り除き作業
(折れ込みボルトにドリルで穴を開け逆タップで取除く行程)
⑪クランクシャフトの先端部加工修理
部品単体
スペーサを挿入
スペーサーが収まった状態
6ページ目 【クランクシャフト修理後の点検】
⑫エンジン修理書の振れの基準値はなく限度値(0.05mm)の記載しかありませんが、振れ測定の結果は0.00mmでした。
⑬肉盛り削り加工した先端部の振れも 0.00mm でした。
⑭各メタル(ベアリング)のオイルクリアランス点検測定
樹脂製のそうめんのような糸状のもの〈プレスゲージ〉をクランクシャフトとメタルの間に挟み
クランクシャフト取付ボルトを規定トルクで締めてプレスゲージを占めつぶします。
そのつぶれた幅を測定しオイルクリアランス(油スキマ)を調べるものでクランクシャフトを組み付けた後の耐焼付きやエンジン打音の有無のため必要な確認点検です。
プレスゲージをちぎってメタルの上にのせ、クランクシャフトを締め付けます
7ページ目 【クランクシャフトジャーナルのオイルクリアランス測定】
測定値0.051mm (基準値:0.034~0.065mm、限度0.10mm)
No.5ジャーナルは新品メタルに交換したのでまったく摩耗しておらず0.038mmでした
プレスゲージがクランクシャフト側にくっつかずメタル側にくっつく場合もあります
【クランクシャフトピン(コンロッド)オイルクリアランス測定】
0.051mmでした (基準値:0.044~0.072mm、限度0.1mm)
8ページ目 【交換部品】
【この後のページ・・・交換部品一覧表とクランクシャフト請求書は割愛しました】
ということで、大がかりな手術は無事完了。
エンジンを降ろさずに下側から出来るなんてスゴイ荒技のように思いますが、確かに自動車を組み立てる場合は下側から入れているので、『そう考えると難しいことではないのかなぁ~』と感じました。
分解写真を見て気付いたところは意外にもクランクピンやジャーナル部の軸受け部が綺麗だったことです。
メタルは滑り軸受けなので常に油分で浮いている状態なので、オイルの管理はとても重要です。
新車時からこまめにオイル交換と定期的なフィルター交換が良かったのでしょうかね?
また、ブン回して乗っていないのも (せいぜい2500rpmまで) 良かったのですかね?
違う観点から考えると、毎日結構な距離を走ることでスラッジが堆積することもなく常にオイルが循環していたこともコンディションを維持できたのではないかと感じました。
今回の大修理で当方負担額はクランクシャフト修正代の4.725諭吉。
これ以外の請求は一切ありませんでした。
新品交換した部品は16個、部品代は3.074諭吉
それ以外に分解・組立、油脂類や代車代合わせると、結構な額になると思います。
新車から今までオイル交換を除く整備は全てディラーで行っていたのと、整備補償が都度付いているのでこれだけの出費で収まりました。
修理後は順調です。
メタルを1個替えたのでおとなしめに走っていますが今のところ異常な振動・音はなし。
慣らしのつもりで少し経過を見ていこうと思います。
時間と予定外の費用は掛かりましたがプーリーに関する不具合は解決できたと思います。
ただし・・・。
なぜ、こうなったのかという原因解決には至りませんでした。
他のエンジンでもプーリー・クランクのトラブルはあるようなので、時折ボンネットを開けてエンジンの状態を見てあげることは大事ですね。
(最近のエンジンは化粧板があるのでそうはいかないのかな?私は化粧板より綺麗な機械美で勝負して欲しいと思いますがね。
NOHAちゃんはボンネットを開けるとターボチャージャーがデンと構えているのでなかなか迫力あって好きです)
試運転込みで既に1000kmほど走りましたが、今のところ順調です。
エンジンの回転もなめらかで、逆にミッションの変速ショックが気になるようになりました。
キリの良い距離になったときに早めにオイル交換しようと思います。