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平方録

向かい風にもめげずわれリッコウす

ひょっとすると今日あたりから関東地方も梅雨入りするかもしれない。

雨雲に閉じ込められる前にひとっ走りしてこようと、久しぶりに自転車を引っ張り出した。
朝から気持ちの良い青空が広がっていて、風も比較的穏やかである。
こういう自転車日和はそうざらにあるものではない。
朝ごはんの後、新聞を読んでいたのだが、新聞を放り出して出かけた。

いつものように湘南海岸の海辺のサイクリングコースに出る。
危惧していたのは路面を覆い隠す堆砂だが、根本的な除去作業が行われたわけではないようだったが、走れるスペースは何とか確保されていたのは何よりだった。
平日はコース上の人影もそう多くはないから、コース上に堆砂さえなければストレスなく走れる。

で、往路は力行してきた。
「力行」ってのは「りっこう」と読み、意味は「誘惑などに負けないで初志を貫徹すること」で、「苦学力行の士」などと使われる。
だがしかし、自転車を漕ぐこととは無関係である。
ボクが使う意味は電車と同じく惰性で走るのではなく、モーターを回し続けてグングン走るという意味。

何のことかチンプンカンプンの人にもう少し説明すると、電車というのは駅を出発する時、モーターを回して前進する。
当たり前だけど…
でも次の駅までモーターを回しっ放しにするかと言えば、さに非ず。自動車のアクセルに相当するノッチを切ってモーターの回転を止め、惰性で走るというのが通常の電車の走り方である。
駅と駅の間の距離が短い山手線など都市近郊路線の電車は走り出すとすぐにノッチを切ってしまう。
だが、駅間距離の長い、しかも超高速で走る新幹線の場合は力行距離が格段に長いって寸法だ。
モーターの付いている車両に乗るとモーターが回転しているのか切れているのかが分かる。
このモーターを回転させて走る状態のことも「力行」という。
力で走るって意味でしょうナ。
電車に初志や誘惑なんてないだろうし…

自転車って乗り物のいいところは、電車と似たようなところがあって、目的地まで漕ぎ続けなくてはならないってわけじゃない。
途中、疲れたりしたらペダルを漕がなくたってある程度は惰性で進んでくれる。
あるいはちょこっと2漕ぎ3漕ぎすれば相当に進んでくれるから、その繰り返しをしていれば結構な距離は労せずして稼げるのだ。

で、昨日は久しぶりに40分間「力行」してきた。
こうやって書くと大したことはないようだが、ちょうど南西の風が吹いていて、これが思いっきり向かい風なのだ。
海辺に吹く風に加えて自分で空気を切り裂いて走るとその分風圧が加わるから、向かい風そのものはそれほど強くなくても威力は侮れない。
で、「力行」と決めたのだからペダルの回転を止めたり緩めたりするわけにはいかない。一生懸命に漕ぐ。漕ぐ。

ボクの肺は20年前にタバコをやめたとはいっても、それ以前にヘビースモーカーだった祟りで90歳代の能力しかない。…と言われた。
いわゆるCOPDってやつらしく、太ももやふくらはぎの筋肉はサッカーで鍛えたおかげで今もってそこそこの威力は発揮してくれているのに、肝心の筋肉に酸素を供給する装置の劣化が問題で、ほんとに苦しかった。

でもこれはわざとしたことで、時々自分の体をいじめてみて身体の具合を点検しているつもりなのだ。
もちろん昔日の面影なんてものはとうに消え失せてはいるが、この分ならまだしばらくはCOPDをせせら笑える ♪
何がアナタ ノ ハイキノウ ハ 90サイ ダイ デス だ。
90歳のジジイが自転車でかっ飛ばすかてんだ。べらぼうめ。

帰りは楽チンでしたな。往路と違って ♫追手に帆掛けてシュラシュッシュッシュ って。
残りの人生すべからく追い風が吹かないかな。
人生風頼み…

茅ケ崎の養浜のためのT字型突堤のある浜辺の一角
流れ着いた廃材などをまとめて置いてあるところで誰かが色を塗ったようだ
センスあるじゃん

plastic matters って文字も見えるから海洋汚染に心を痛めている人の手になるものらしい

魚が表情を曇らせている
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