部屋に入ってその中身を見ると戦場ヶ原の湯ノ湖まで行って「湯滝」を見物し、さらに「龍頭の滝」に寄り、再び中禅寺湖畔に戻って「華厳の滝」を案内するというコースがあった。
正直言って今回は滝は特に念頭になく、中禅寺湖周辺では新緑を眺めるくらいで十分だったのだが、モノにはついでというものもある。試しに寄り道コースを選んでみたのだ。
ホテルの出発は午前9時半である。
期待しないで行ったからなのか「湯滝」は落差も水量も結構な迫力じゃないの。思わず「へぇ~!」が出た。
滝の上部は2段になっているようだ。日光市観光協会のサイトによると高さ70m、長さ110mの規模だという。
「龍頭の滝」の由来は分かれて落ちる2筋の流れを髭に見立て、その真ん中の岩が龍の頭、流れを胴体に見立てたものだそうな。
そういわれればそう見えなくはない。岸辺のツツジが花を添えていて良かった。
最後に訪れた「華厳の滝」の第一印象は「ん? 意外に短くて太めだな」だった。
郵便切手やら観光写真から得てきたボクの華厳の滝に関するイメージは「高くて大きい断崖に描かれた長くて細い一筋の流れ」というものだったからである。
雪解け水が加わってこうなのか、それともいつもこんな具合なのかは分からない。滝つぼの見える展望台に下りるエレベーターの案内表示には水量が毎秒1.8トンと出ていた。
太めの美人? だったんだ…
柱状節理の断崖が頭上を覆うようにせり出してくる。新緑の華厳の滝である。
エレベーターの乗り場前の広場からも滝の上半身が見えた。
小学校5年生の秋の遠足が日光で東照宮や華厳の滝見物が含まれていたのだ。小学校に入って初めての1泊旅行で友達みんなと大いに楽しみにしていたんである。
なのに…
興奮していてアドレナリンがたくさん出ていたのだろう。低気圧が近づいていて気圧も下がっていたんだと思う。今にして思えば楽しい行事の前は気を付けなければいけなかったのだ。
案の定、小児喘息の発作が起こって、遠足どころではなくなってしまった。何しろ満足に呼吸が出来なくなってしまうのだから…
以来60年! あの時の悲しさをリカバリーする時がついにやってきた、という訳なのだ。こういうことってあるんだねぇ。
東照宮にも立ち寄ったのは、一昨年ここを初めて訪れた時、平成の大修理中で陽明門も本堂にも覆いがかぶせられていて内部こそ観覧できたのだが、外観の全体像を見ることがかなわなかった。
それのリベンジなのである。小学生以来の念願は、そういう訳で中途半端に終わっていたのだ。
この日は昼食に金谷ホテルの「百年カレー」を食べた後ぶらぶら歩いて東照宮に向かって歩き始め、ホテルの急坂を下り終えたところで雷鳴が鳴り響き、黒雲が頭上を覆い始めると間もなく、大粒の雨が落ちてきた。
防水のウインドブレーカーを持っていたので事なきを得たが、そうでなければぬれねずみになるところだった。雷雨はものの10分間くらいで青空が広がった。
この後東照宮では「鳴き龍」を聞くのだが、その前に「雷鳴」まで聞くとは思わなかった。
3名瀑とされる滝の前ではそれぞれに「瀑鳴」も耳にしているので、今回は巧まずして「3鳴共演」ということに相成った次第。
さすがに60年ぶりの大歓迎ってのは堂に入っている。
湯ノ湖へ向かう途中、湖畔より標高が高い分、戦場ヶ原はまだ新緑の真っただ中で、カラマツ? などの新緑がきれいだったのだが、あちこちにヤマザクラのような白い花を沢山咲かせた木々が目立つ。
宿のバスの運転手さんに聞くと「ズミ」だという。
男体山を背景に新緑と共演して咲く白い花の塊は2か月前に見た南関東のヤマザクラを彷彿させて思いがけないことであった。
今まさに満開といったところ。
水気のある明るい林床にはクリンソウが咲いている。
かくして、初夏の戦場ヶ原というところを大いに見直した。今度はそのつもりで訪れてみたいものである。
さて、今日から普段の生活に戻る。どうやら今年の梅雨の訪れは早そうで、今朝だってどんより雲が垂れこめているが、明日以降は走り梅雨らしい。来るなら早くてもいいが長逗留は御免だぜ、梅雨前線さんよ。
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