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平方録

気でも狂ったかと思ったぜ

海がきれいになり過ぎちゃったので「もうちょっと汚そうぜ」という趣旨の法律改正が国会で可決されたんだってさ。
もちろん日本の国会での話さ。

お隣の国で都市封鎖だ隔離だ居住者全員のPCR検査だ、と上へ下への大騒ぎが始まり、対岸の火事見物を決め込んでいたら、あっという間に全世界に火の粉が飛び散ってパンデミックが起きたり、薫風薫るはずの5月には早々と梅雨入りしちゃう地方が広がったり、次から次へと驚かされることばかり立て続けに起きているから、まぁ、これもそのうちの一つさと思えばいいのかもしれないが…

高度経済成長期を経て工場や家庭の雑排水で汚れきった瀬戸内海をきれいにしようという「瀬戸内海環境保全特別措置法」が制定されたのは1973年のことだそうな。
全国の海や川などで急速に進んでしまった汚れを防ごうと制定された「水質汚濁防止法」の瀬戸内海に限った特別法である。
その改正案が可決成立したのだ。
肝心の中身がビックリ仰天である。

曰く「これまで汚染物質である栄養塩(窒素、リン)の排出を規制して減らしてきたが、海水がきれいになり過ぎちゃったので生き物の栄養が不足してしまっている。これじゃぁノリの養殖も出来ないからせめて養殖に必要な栄養分を増やすために、工場や家庭からの排水規制を緩めようや」というのが、改正の趣旨であるそうな。
まぁ、瀬戸内と言ってもいまだに栄養分が多く(つまり富栄養化で)汚れの指標の一つである赤潮が発生する海域もあるそうだから、定期的に水質を調べ、問題があれば計画を見直すという留保は付けられたようだが、何ともはやである。

ボクの常識に照らして考えるとこれはホントに驚きで、養殖と言えばすぐピンとくるカキの養殖業者が常日頃海の中の環境変化に目を凝らすのは当たり前だが、「海に向ける目」以上に注意を払っているのが養殖海域に注ぎ込河川の流域に広がる山林であるということは、カキ好きにとって重要な常識である。
カキは海水中の栄養分を摂取して‶海のミルク〟に育っていく。
その海のミルクの成長を助けるミルクは山の木々が秋になると葉を落とし、その落ち葉を微生物が分解して山に堆積させ、窒素やリンはもちろんその他のミネラル成分となって少しづつ川に流し込んで海へ送り届ける。
それがカキの血となり肉となっていく。

だからカキの養殖業者にとって山の状態は海の養殖いかだの周辺と同等か、それ以上に重要なカギを握っているのである。
確か、今でも東北や広島辺りのカキ養殖業者は時々山に入って植林やら山林の整備に積極的に汗を流しているはずだ。
こうした海でタツキを得ている人々が、実は山を見ていたのだということは漁師以外にはあまり知られていなかったが、ホントの話なのである。

確かに河川の流域に広がる山林は今、荒れているところが増えている。
そればかりか、開発に次ぐ開発で流域そのものから山林が消えかかっている河川だって少なくないから、必然的に栄養素の供給は減る。
だからってなにも工場や家庭の雑排水に頼ることはないんじゃないのさ、とボクはびっくり仰天しているのさ。
それにしても何が起こるか分かったものじゃないよな。


見出し写真を含めて茅ケ崎・柳島海岸で海風に揺れる「チガヤ」の穂先



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