平方録

スーパームーンで思い出した事

元旦の夕方と2日の夕方と、2日間続けて大きくて真ん丸の月が昇ってくるのを見ながら、あぁ、これが「四智円明の月」ってやつなのかと思った。
まだ明けきらない午前4時の寝室のブラインド越しに青白い白い光を差しかけてきてボクを起こしたのも、同じ月である。

毎週出向いている円覚寺の坐禅会では坐禅の前と後に必ずいくつかのお経を唱和するのだが、そのうちの一つに「白隠禅師坐禅和讃」というお経がある。
そこにこの四智円明の月が出てくるのだ。

(前中略)
因果一如の門ひらけ 無二無三の道直し
無相の相を相として 行も帰るも余所ならず
無念の念を念として 謡うも舞うも法の声
三昧無碍の空広く 四智円明の月さえん
此の時何をか求むべき 寂滅現前するゆえに
当処即ち蓮華国 此の身即ち仏なり

最後の部分を抜粋したものだが、釈迦の生まれたインドの言語であったサンスクリット語を漢語に翻訳したものをそのまま日本に持ち込んで読んでいる般若心経などと違って、白隠禅師という富士山の裾野で生まれた偉い坊さんが最初から日本語で書き下したものだから頭に入りやすいのである。
テンポやリズムもとても良く、しかも唱えながらチンプンカンプンな般若心経と違って意味が良く分かるので般若心経より数倍も早く覚えることが出来た。
四智円明の月さえん、というところのテンポや節回しも好きで、時々何の脈絡もないところでこの辺りの言葉が突然浮かんできたりすることがあるくらいなのだ。

それにつけても「四智円明」とは何なのか。
円覚寺の横田南嶺管長が修行中の雲水たちの集中修行期間の折に教え諭した内容が残されていたのでそれを引用してみる。

≪坐禅をすれば無念・無心になると言いますが、それは何も見えなくなる、何も聞こえなくなることでは決してありません。むしろありありとはっきりと物事が見えてくる、そういう智慧が開けてくるのが本当です。
「正受(しょうじゅ)」という言葉がありますが、これは「正しく受ける」つまり、ありのままに物事を受け取るということに他なりません。しかし、人間というものは、ありのままに見るということは極めて困難なことです。
大概は自分の都合の良いようにか、自分の分が良いように見てしまっています。
ですから、坐禅をして正しい智慧の眼を開くことが大切なのです。

白隠禅師坐禅和讃に「四智円明」という句が出てきます。
この「四智円明」こそ坐禅をしてわれわれが目指すべきところなのです。

四智とは
一、大円鏡智 鏡のようにすべてのものをありのままに映し出す智慧。
二、平等性智 普段、私たちは自分の都合でものを差別して見ていますが、それを離れて物事を平等に見る智慧。
三、妙観察智 対象について十分に観察する智慧。
四、成所作智 以上のように状況が把握できたうえで、その場でどうすればよいか、何を為すべきかが分かる智慧。

私たちは生きているといろいろなことが起こり、様々なことが降りかかってきます。坐禅をすると言うことはそういう物事に対して何も感じない、何も気付かなくなるということではない。
むしろ正しい判断をすることによって、心の散乱を防ぎ、ありのままに状況を受け止め、自分の考えや思い込みを捨てて平等に物事を見ることが出来るようになります。
そして、良く観察することによって、どうしてこういう状況になったのか、こういった次第に相成ってしまったかがわかり、この場をどのように対処したらいいのかが自然と分かってきます。
つまり、坐禅をしていけば「四智円明」つまり、私たちが本来誰もが持っている「四智」の働きが十分に発揮できるようになるのです≫

—―と、まぁ、こんな具合に説いているのだ。

坐禅をしなくてもこうしたことが自然と身についていて「四智」を発揮できている人に出会うことがある。
そういう場合にボクは尊敬のマナコで見上げるしかないのだが、わが身を振り返って何とかしたいと思ってきたのだ。
しかし「大円鏡智」一つ取り上げても、そうそうたやすくできることでもない。少なくともボクの場合はそうである。
古希にしてまだそんなことをグズグズ言っているのかと呆れられそうだが、出来ることなら何とか身に付けようともがいているのである。




わが家の鉢植えの「流鏑馬」がごらんのとおり蕾を開きかけていて、蕾の隙間からかすかに芳香が漂い出している
季節外れに咲かせてしまって誠に申しわけなく思っているのだ


2日の「四智円明」のスーパームーンのお出まし
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「随筆」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事