平方録

フンババの復讐?

生まれてしばらく母親の実家の近くに住んでいたので、先祖の墓のある横浜に戻ったのは小学校6年生の時である。
横浜の小学校に転校してびっくりしたのは、新しくクラスメートになった中にメソポタミアとかチグリスユーフラテス川って知ってる、と話かけてきた奴がいたことである。
チンプンカンプンで首を傾げていると、ヨンダイブンメイのハッショウチだよという。

ますます分からないので、たぶん恥ずかしさで顔が赤らんだんだと思う。
すると、世界には4つの文明というものがあって、ナイル川、チグリス・ユーフラテス川、インダス川、黄河の流域に栄えたんだという。
今の世界はそこから発展して行ったんだとも。
正直いって、田舎の小学生だった身にはすべてが初耳で、知らないことが恥ずかしくもあり、嫌なところに来ちゃったなと子ども心に思ったものである。

クラス全員がそんな事を口にしていたわけではないが、中学を受験するから今のうちから覚えているんだと、その子達は言っていたし、休み時間などには受験組でそんな話をよくしていた。
へぇー、中学って受験するもんなんだとも、その時初めて教えられた。

今は懐かしい思い出である。
5000年前の黄河文明でもビールが醸造されていたことが分かった、というニュースを新聞で読んで、へぇ~と思ったのだが、その記事にビールそのものの発祥はそれよりも1000年も早い6000年以上前のメソポタミア文明であると書かれていたのが、小学校時代の記憶がよみがえった発端である。
メソポタミアとかチグリス川とかの名前を読んだり聞いたりすると、いまでも特別な感慨が湧いてくるのはどうしようもないのだ。

だから、ギルガメシュ叙事詩のフンババの話も忘れられない。
古代メソポタミアで神々の住むレバノン杉の番人を任されていたのがフンババである。
顔はライオンだとか、人間とは似つかない姿かたちをしていたらしいが、人間にとっての「恐怖」という位置づけで登場するのである。
そのフンババをだまして油断させ、殺してしまうのが英雄のギルガメシュである。
そしてレバノン杉を切り倒し、建設用材にしたりするために町に持って帰るのである。

人口が膨張したメソポタミアではこうした資材が多く必要になり、多くの人を飢えさせないために新しい耕地と家を建てるための土地も必要だったのである。
レバノン杉の森の伐採はこの問題を解決するための一挙両得作戦でもあったのだ。
この寓話を指して後世のわれわれは、やれ環境破壊の最初のケースだとか、自然破壊はここから始まったのだと、したり顔で口にするのである。
その実、その問題の抜本的な解決策は見いだせないままなのはフンババの時代と何も変わっちゃいないのだ。
今度のサミットだって、こういう問題はカヤの外だろう? 一方で、核兵器すら廃絶できない世の中なのだ。何がサミットだ、何がヒロシマ訪問だ、チャンチャラ笑わせるぜ。

しかし、フセインって男もフンババだったのかね。
じゃぁ、その後のISは?
ギルガメシュのメリケンと西欧に対して、フンババの復讐が始まったということかね。
さしずめ今の世の中なら、核兵器こそフンババじゃないのかね。
のさばるフンババ、現れないギルガメシュ。
根が深そうだなぁ。



わが家のジューンベリーの実が赤く色づいてきた。例年だと鳥たちに食い荒らされてしまうのだが、今年はまだその兆候はない。ホトトギスはまだ鳴かないし、今年はいささかヘンじゃないのか?
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