平方録

日本の色、いろいろ

いつもの通り午前4時に起き出し、洗面など済ませてベランダに出てみる。

ちょっと前まではまだ闇に包まれている時間帯だったのだが、この季節になると午前4時というのは、辺り一面が白んできていて、晴れてさえいれば東の方角はオレンジ色を含んだ極薄いピンク色というのか、言葉で表現するにはなかなか難しい淡い色彩が広がる。

植物を染料にした日本の染色技術は素晴らしく微妙な色合いを生み出し、その色の種類もどこでどう見分けるのか知らないが、半端な数ではない。
例えば日の出の頃の東の空を表現するのに、夕日に使われる茜色が相応しくないのは当然で、たんに赤みを帯びているというだけでは、全く別物になってしまう。そもそも茜色は相当に深くて濃い赤である。

ボクのイメージでは日の出の頃に色は赤紫とか躑躅色(つつじいろ)、牡丹色、薔薇色、韓紅(からくれない)、あるいは珊瑚朱色、薄緋(うすきひ)、真赭(まそほ)などが相応しいように思える。
でも、なんのこっちゃ?というようなものばかりで、色見本を前にして見比べなければ分からないようでは困りものである。
それに続く空の色だって白藍(しらあい)、水色、瓶覗(かめのぞき)、秘色色(ひそくいろ)、空色、勿忘草色(わすれなぐさいろ)、青藤色、白群(びゃくぐん)、浅縹(あさはなだ)などなど。
初めてお目にかかる表記もあって、何やら秘密の暗号か符牒のような趣である。
とても日用遣いに適したものとも思われず、その色は瓶覗ですね、浅縹ですよと言われたとしてもチンプンカンプンだろう。

これらの命名者たちの感性というのか、語彙力と言うのか、よほど研ぎ澄まされ、知識も深かったんだと思われる。
同じ日本人とはとても思えない。

「夏の思い出」という歌がある。江間章子という人の作詞だが、🎵夏が来れば思い出す はるかな尾瀬 遠い空🎵 ってやつで、この中に「石楠花色にたそがれる はるかな尾瀬 遠い空」という表現がある。
じゃぁこの石楠花色(じゃくなげいろ)って、一体どんな色なのか。
日本の伝統色をまとめた和色大辞典にはこの色は載っていない。作詞者の創造であるらしい。
もっとも石楠花色を紅緋とか深緋(こきひ)とか猩々緋(しょうじょうひ)という伝統色に置き換えてみたところでなんのこっちゃと言うことになってしまう。

やはり、こういう歌の場合は具体的に連想できる色合いを持ってきた方がイメージしやすいし、実際に尾瀬ヶ原に石楠花が咲いているのかどうか知らないが、仮に咲いていればドンピシャだし、そもそも無くったって容易に想像がつくというものである。
ん? シャクナゲって、そもそもどんな色だっけ。

ボクが勝手に名付けてもいいんだろうけど、その場合はあくまで主観的なものであって、他の人にはイメージもできず通用しないのであれば、単なる独りよがりってもんである。
簡単なのはピンクの薄い色とか、水色をもっと薄くした色とか言ってた方が他人には伝わりやすいかもしれない。
でも、ピンクに少し赤と黄色を混ぜたような感じとか、水色にものすごく薄い灰色を部分的に加え、そこに群青色をちょっと垂らして…などと言い始めたら、また元の木阿弥である。

つまらないことを書き連ねているうちに、お日様がかなり上がってきてしまった。
起きたばかりの西の地平線近くには中黄(ちゅうき)というのか黄檗色(きはだいろ)をした立待月がぽっかり浮かんでいたが、もうとっくに沈んでしまった。



昨日の朝はまだイチゴのような蕾だった「ノリコ」が、午後気温が上がると最初の花が開いた


アオスジアゲハがやってきていた


今朝4:15の東の空。個の色合いを表現すると…


太陽が昇る
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