午前4時過ぎにベランダに出て見ると空は曇っていて星は見えず、空気はひんやりしてはんそでのTシャツに短パンではくしゃみが出そうになった。
季節の歯車はゴットンと音を立てて動いてしまったようで、どんなにあがいてもあの夏の暑さはもう戻って来そうにないと思うと夏大好き人間のボクとしてはいささか悲しい。
去年は事情があって止めておいたが、毎年夏になるとロータイに鞭打って100km余りの道のりを自転車で走って来るのを楽しみにしている。
そんなわけで今年は古希記念の一昨年に続いて2年ぶりの踏破を計画していたのだ。
それを「やめておいた方が無難そうだな」と思い直したのは35℃を超える猛暑にひるんだからに他ならない。
百葉箱の中の気温が35℃ということは炎天下の照り返しの強いアスファルト道路の上ではいったいどのくらいになるというのだろう…
それを考えるとコロナ禍で体力も落ちているだろうし、いささかためらいの気持ちが勝ったのだった。
熱中症というのも大敵である。
ここはひとつ逃げるが勝ち ? という判断もアリだろう。そう納得させた。
しかし、目的地と定めていた小田原の酒匂川堤防上のサイクリングコースを走る魅力も捨てがたい。
彼の二宮尊徳が度重なる水害を防ごうと堤防強化を目指して松の木を植える事業を展開したお陰で、ここの右岸堤防の一部数百メートルにわたって樹齢数百年の松が並木を作っている箇所があって、この景観がまた実に見事なのである。
足柄平野の真ん中を相模湾目指して悠然と流れる川筋に沿って伸びる松並木の美しさは、川と並行して走る小田急線の車内からも眺められ、ボクはこの電車の中から女子学生数人が松並木の中をシルエットになって自転車を漕ぐ姿を目撃して以来、一度はここを漕いでみたいと思ったものだ。
まるで映画の「青い山脈」のシーンのようだ…そう思ったのだった。
動機というのは案外たわいないもので、他人が聞いたらフンと鼻でせせら笑わらうようなものが多いのだ。
猛暑が邪魔するなら知恵を働かせよう。
ということで、車に自転車を積んで途中の片道40km、計80kmを省き、いきなり中流域の松林の堤防の上に自転車を運んだのである ♪
以下は8月20日に漕いできた〝夏の忘れ形見みたいな記憶〟です。
堤防のすぐ脇にある小田原アリーナの駐車場に車を止め、堤防に上がった途端、自転車に乗った女子学生の一群が通りかかり「コンニチハ~」と明るい挨拶を残して走り去って行ったのでボクは目をパチクリさせて驚き、かつ喜んだ
アリーナで部活のトレーニングでもするらしい
セーラー服だったらもっと良かったけれど…夏休みだからね
ほんの4~50m先のコース脇には園芸品種のガウラが植えられ風に揺れていた
画面奥に薄っすらと見える山の連なりは丹沢山塊
若いサイクリストが案内板の地図を見ていた
堤防の脇には水田が広がる
はるか遠くに見える円錐型の山は矢倉岳 箱根外輪山の一部を成している
小田急線の箱根強羅行き特急ロマンスカーが差し掛かる
矢倉岳の真後ろには全く同じ形をした富士山が薄っすらとのぞく(目を凝らしてよぉっく見ると分かります)
樹齢数百年の松の並木が続き、木陰を提供してくれるとともに川から心地よい風が届くので、松並木を走る限り快適そのもの ♪
視界が遮られるほど樹影が濃い所も
♪…♪…♪…♪…♪…
太公望は川に入ってアユを狙う
途中で小田急の線路と交差する
小田急の線路をくぐってさらに進むと中流と蒸留の接続部みたいなところになり、コースは若干上りになる 右手の川のさらに右側の山が迫る狭いところをJR 御殿場線と国道246号、そして東名高速が折り重なるようにして通っている
今の東海道線の丹那トンネルが完成する以前は御殿場線が東海道線で、大阪方面への列車は蒸気機関車に引かれてこちらの山坂を上り下りして行った
この炎天下の河原でパークゴルフをする元気印老人の面々
わが家から50kmのところにある「文命堤」に到着
石碑があり…
説明版が置かれている
川に入って釣りする分には涼しいんだろうな
橋の上から見た松並木
戦後しばらくは全国どこの小学校の校庭にも薪を背負いながら本を読んでいる二宮金次郎の銅像があった
その二宮金次郎が始めた事業が堤防を守り続けている
来年が猛暑でなければ、やっぱり家からここまで自転車を漕いできて再び漕いで帰りたい