ヒイラギの花が咲いているのを初めて見た。
北鎌倉の明月院の開山堂の左わき、大きなやぐらの前に植えられている株に白い花が、あの特徴あるギザギザの葉に隠れるように咲いていた。
直径がせいぜい1cm程度の小さな花で、十数輪づつくらい一塊になって咲いていたが花の色が白いせいもあってか、うっかりすると見過ごしてしまいそうなくらいひっそりとしている。
ネットで調べてみるとキンモクセイに似た甘い香りがするそうだけど、マスクをしていたので分からなかった。
匂いがあるのか、あるとすればどんな匂いだろうと、ちらっと頭をかすめたのだが、ボクの頭の位置あたりに咲いていたので鼻を近づけて嗅ぐことが出来なかったという物理的な理由もあるのがちょっと惜しかった。
ヒイラギと言っても様々な品種があるらしいが、日本に自生している品種はモクセイ科だそうだから、キンモクセイに似た香りを放つというのも頷ける。
わが家の狭い庭にも1本植わっているが、花など一度も見たことがなかったから、正直言って「へぇ~」「ほぉ~」と感心した。
雌雄異株だそうで雄花が咲く木もあれば雌花の咲く木もあるらしい。
それはそれでナットクなのだが、花が咲かない株は何なんだ ?
それはともかく、花の後は結実して黒い実をつけるそうだ。
花を見たことないんだから、実なんてなおさら気が付かないで生きてきた。
ネットで得た知識だが花ことばが5つもあるという。
トゲトゲの葉から連想した「用心深さ」、金づちの柄に使われるほど固い幹に由来する「剛直」、ピンッとは来ないけれど「先見の明」というのもあって、これは年月とともに葉のトゲが少なくなり葉も丸みを帯びていくことから、初めの姿に捕らわれずに先のことを見通す…云々とあった。
4つ目は「保護」。トゲトゲの葉が日本ではイワシの頭と一緒に、西洋でも魔よけのおまじないに使われることからくる発想らしい。おしまいは「歓迎」。こちらは花の愛らしさと甘い香りがその由来だとか。
まっ、こういうものは最初につけたもの勝ちみたいなところがあるから、黙ってハイそうですかと言っておくしかないが、色々こじつけたくなるくらい個性的だってことなんだろうな。
ヒイラギの名前は葉のトゲトゲに触るとヒリヒリ痛むことから「ヒリヒリ痛む」を表す日本語の古い動詞である「疼(ひひら)く、疼(ひいら)ぐ」からきているという。
いずれにしても常緑で冬枯れの野山に青々とした葉を茂らせ、しかも甘い香りを放つ白い花を咲かせるヒイラギが人々の心をとらえたことは間違いない。
花言葉にしてもずいぶんと怪しげなものもあったけれど、木偏に冬と書く漢字一文字の「柊」を当てたということをボクは了としたいね。
モミジの紅葉がかぶさる冬の入り口で初めて「柊」の白い花を知ってつくづく感じたことである。
北鎌倉の明月院境内に咲くヒイラギの白い花