ほぼ9時間の鈍行列車の旅だった。
美術館行きの路線バスは美術館正門前に横付けになり、目の前がチケット売り場になっている。が驚いたことにバスが着く前から行列が出来ている。
これじゃぁ上野の森の美術館で開かれる人気の美術展と何ら変わらないじゃないのと思いつつ、辺りを見回すと駐車場には大型観光バスが6、7台も並んでいる。
げっ! ってことは団体客が大挙して? …まさかと思いつつ館内へ。
悪い予感は的中し、作品の前はどこも人人人。
ゆっくり作品と会話しようと思ってやってきたのに、人の頭越しに見ることになるとは。
仕方なく、とりあえずどんな作品が展示されているかだけでも確かめ、それからもう一度振出しに戻ってみて、そうすれば少しは空くだろうと…
そうこうしながら最初の展示作品前に戻ってみると会場は嘘のように静まり返っている。
お陰で説明文もゆっくり読むことが出来、一つ一つの絵とじっくり対面できた。ヤレヤレってのはこういう時のための表現である。
展示は「青少年時代、若き南画家」「千葉時代、新しい画風の模索」「一村誕生」「奄美時代、旅立ちと新たなる始まり」の4部構成になっていて、それぞれの時代に作品が集められている。
一村の絵というと何はともあれ奄美大島を舞台にした南国の木々が生い茂る独特の光景とその森に咲く花や飛び交う鳥やチョウなどが思い浮かぶ。
ただ、今回の展示作品の中にこの時代の作品は多くなく、代表作の一部として並んでいたものも写真だったりしていささかがっかりした。
しかし、金屏風に農家の庭先を描いた「秋晴」という大作にはままた会えた!
つつましい生活を送る静かだが生き生きした農村の暮らしぶりが装飾的ともいえる表現の中からリアルに伝わってくるようで、長い時間見続けていただけでなく、立ち去った後もまた何度か舞い戻って眺めたりした。
この作品は「一村誕生」のころのもので、川端龍子主宰の展覧会に意気揚々と出品したが落選にされ、以来龍子と絶縁したと言われる、いわくつきの作品である。
これに会えただけでも今回は良しとしよう。
このほかにも「千葉時代」「一村誕生」の時期の好作品にも出会えている。
7歳から22歳のころの「青少年時代」の作品の中に、既に奄美時代を彷彿させるような絵が描かれていたのも「へぇ~」と思わされたところだった。
「蓮図」という蓮の花と葉を描いたダイナミックな構図の絵で、まさに栴檀は双葉より芳し、なのだ。
この蓮図に限らず、よく見るといくつかの作品にそうした傾向が表れてもいるようだった。
箱根の岡田美術館でも今月26日まで「田村一村の絵画展」ってのをやっているらしい。分散展示になっちゃってるんだナ。
しょうがない、目と鼻の先だ。見に行って来なくっちゃぁ。
「秋晴」。この作品に会えたのはとても良かった
ビロウとアカショウビン。代表作の一つだが、これあったかなぁ~。印象にも記憶にも残っていないのだ
戦争中に平和の到来を願って何枚かの仏画を描いていて、特に「蓮上観音像」は4作品が残されているそうだが、会場には赤い蓮ではなく白い蓮の花の上に乗った観音像の作品が展示されていて、その淡い色調の中に浮かび上がる観音像の気高い姿に驚いて、この先品の前もなかなか立ち去りがたかった
この美術館の建物は美しく、特に屋根の美しさは際立っていて、まるで屋根が船のように水に浮かんでいるように見える
2棟並んでいる
内部の回廊には主に佐藤忠良の彫刻作品が展示されている
建物の内部から見ても美術館は水の上に浮かんでいるかのようだ
コメント一覧
heihoroku
ひろ
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事