昨日から天気予報は「春一番」を予告し、日中の最高気温は20度に迫るだろうと繰り返していた。
ベランダに出てみると辺りはまだ真っ暗で、ほぼ中天に半月がかかっていて良く晴れているが、南西の風が少し強いようである。
しかし、この風も空気も真冬のものではない。身を切られるような鋭くとがったところが感じられないのだ。
昨日、ウン十年かぶりに荒崎海岸に行っ帰りに立ち寄った漁港の魚屋で生ワカメを見つけて2袋買ってきた。
相模湾のワカメの多くは養殖ものだが、魚の養殖と違って人工のえさを与えるわけではないから、限りなく天然に近いワカメと言えるのだろう。
一袋250円だったから、まずまずお買い得ではないか?
何しろ採れたての「ナマ」である。店のオヤジが「氷を入れときますか」というくらいだから、鮮魚並みの扱いなのである。
大切に持って帰ってすぐに冷蔵庫にしまった。
大きめの鍋に沸かした湯にくぐらせると、濃い茶色をしたワカメが一瞬のうちに鮮やかな緑色に変わる。
まさに「若芽」の真骨頂なのである。
この日はただ酢をかけただけで食べたが、潮の香りが立ち上るようで何とも言えない。若いワカメだからとても柔らかい。柔らかいくせに歯ごたえはシャキシャキしていて、そこが不思議である。目にも鮮やかな緑色に変わるところなんぞも含めて、いかにも早春にふさわしい食材なのである。
高級料亭に行って高い金を積みさえすれば、どこに暮らそうと口にできるだろうが、そういう身分でもないのである。
旬のものを旬のひと時にだけ、それも手ごろな値段で手に入れる。海辺で暮らしているゆえの特権であり、そうでなければ、なかなかこうした贅沢にはありつけないものである。
餃子の副菜として食べたのだが、今晩辺りは「春一番」を祝しておいしい豆腐とともにしゃぶしゃぶで食べてみたいものである。
目の前で湯の中に泳がせたワカメが鮮やかな緑色に変わるところを、そのままサッと掬って口に運ぶのである。
ウン! これぞまさしく生ワカメにふさわしい食べ方ではないか。
ニッポン人にしか分からない味なんじゃなかろうか。
おそらく〝口福〟と〝眼福〟の両方を満たしてくれること請け合いである。これを日本酒で合わせればいうことはない。
待ち焦がれた春の到来を寿ぐ最上の食卓になりそうではないか。
今年初めての生ワカメ
荒崎海岸の岩は黒くて硬い凝灰岩と白くて柔らかな砂岩・泥岩の層で形作られていて、今から数千年前の三浦半島がまだ海底にあったころのものが隆起したもので、独特の色と景観を見せている
海を見下ろす丘の南斜面では名前の知らない花が咲きだしている
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