平方録

天の配剤

家を出る時もまだバシャバシャと雨が落ちてきていた。

行き交う車が水しぶきを上げて突っ走る湘南海岸沿いの松林の中の国道134号線をそれてクラブハウスに車をつけた時は絶望的な気持ちだった。
先に到着していた仲間から「午後は晴れるそうですから、とにかくスタートしましょう」と促され、渋々従ったのだ。
野遊びを含めて屋外に出てするものはデモ行進であっても何でも、お天道さまの下でやるのを旨としている。
ゴルフにおいておや。それをよりによって雨の中で芝刈りなんぞできるか、という気分だったのだ。

しかし〝何ということでしょう〟という感に堪えない響きを含んだこのセリフは、こういう時にこそ使うのだと言わんばかりのことが起こったのだ。
さぁ、第1打をという段になって最初の仲間が構えた途端、雨が止んだ! んである。
午前中こそ名残惜しそうにパラッと落ちてくることはあった。あったが、気になるほどではなく、昼食を終えた午後は青空も広がったのだ!

国道も松林の中だが、ゴルフコースも松林の中にある。
松、松、松…見渡す限りというか、松以外見えないゴルフコースなのだ。
突如降りやんだ雨に濡れて滴を垂らす松の木の回廊を歩きながらボクは「あぁ、そういうことだったのか! 」と悟ったのである。
数千本の松の枝先で花粉をたっぷり蓄えた花穂が〝その時〟を今か今かと待ち構えているのだ。

こいつらが風に吹かれるたびに揺れながら花粉をボォァ~ッとまき散らす光景を嫌と言うほど見せつけられてきたのだ。
目に飛び込んだ微細な粒子はゴロゴロと違和感を生じさせ、時によっては痛くて目を開けていられないほどなのである。ゴルフどころではなくなって止めちゃったことがあるくらいなのだ。
それがパンパンに膨れた花粉袋が、雨に濡れてしまっているからボォァ~ッと飛ばせないのだ。
「あぁ、これこそが天の配剤と言うやつなんだな」
ボクはつくづくそう思い、我らの日ごろの行いの良さはこんなところに現れるものかと、「お天道さまは見ているぞ」という言葉をしみじみ噛みしめたものである。

よりによって〝あの〟カミさんと〝あの〟元総理秘書官の2人を伴って『卒業旅行』に旅立った〝元凶〟に聞いてみたいね。
「どうよ? アベちゃん! 」と。

仲間が持ち歩いた歩数計によればゴルフ場だけで1万7000歩。
風呂で汗を流した後、駅前に出て無国籍料理の食堂で「真っ黒酢豚」を芋焼酎のロックで流し、最後に山椒と黒ゴマの香りが食欲をそそる「黒ゴマ担々麺」で締めて天の配剤に感謝したんである。
次回は7月のボクの誕生日にやることになった。
「古希のお祝いにちょうどいいですねぇ」ということでアレヨアレヨと流れが出来てしまったのだ。

ちょっと真面目に練習して臨むとするかなぁ。




雨のち晴れ! 右側の松林の中を国道が走っていてその先にはすぐ相模湾が広がる


どっちを見ても松、松、松…


この一袋一袋がボォァ~ッと花粉を飛び散らせるのだ


北風に乗って黄色の煙幕を張ったように海に広がる松の花粉=2016.4.15
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