ナリヒラ フー? やだなぁ、アリワラのナリヒラさんですよ。
大昔の人ですけどね、それも平安時代……
あの和歌を詠んだナリちゃんって言えばわかります? 世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし――って。
サクラさえ咲かなければ春をのんびり過ごせるのになぁ~って、サクラ愛が高じた歌を作った人ですよ。
ボクも桜が咲き出す時期になるとホント、あっちのサクラこっちのサクラと気になって気になって……
しかも雨でも降ろうものなら、雨に打たれて花が痛みやしないか、散ってしまいやしないかと、もう心配で心配で。
風が吹けば吹いたで、こんなに強く吹いたら花が一斉に散っちゃうじゃないか、とハラハラドキドキして夜も眠れないって言うのはサイギョーさんと一緒で、えっ? 今度もまたサイギョー フーですかぁ~
やだなぁ、 春風の花を散らすと見る夢は さめても胸のさわぐなりけり って歌知りません? 西行法師のことですよぉ。
サイギョーさん、実は一面では花が散るのをすごく惜しんではいるけれど、心の奥底では落花の情景そのものにただただ惹きつけられ、息をのんでその美しさに没入している心を語っているってのが、エライ先生の解釈でね、そういえば確かにカーテンとか芝居の幕とかをサァ~っと引くようにって表現するととても限定的だけど、大自然の中を一斉に花びらが風に舞いながら散る光景に出くわすと、そのドラマチックさと美しさに思わずため息が出ちゃいますよね。
あんな気持ちにさせられるのはサクラを置いて他にはないからなぁ……
てなわけで、昨日も花曇り的な空の下、いつもは余り足を踏み入れない県道を挟んで北側の尾根筋をたどってきましたよ。
まだちょっと早くて、種類によるんだろうけど、これからって言うところでしたな。
楽しみは長く続いた方がいいからね。その分「のどけからまし」の心境が続いちゃうけれど。
尾根に分け入る登り口はたくさんあるが、市役所通りの民家の間から登ることにした
すぐに上り坂が始まる
民家の裏手の少し高くなったところに花畑があってアネモネとかリナリアが咲いていた
数年前まではパンジー畑が広がっていて、それはそれは「エ~ッ、こんなところに」と驚く花園だったのだが、花咲ジイさんだかバアさんだかも歳を取り過ぎてしまったのかもしれない
花畑の脇の道端に目の高さで咲いていたヤマザクラの歓迎を受ける
光がよく射し込む尾根道を進んでいく
すると木立の間から子供たちの歓声が聞こえてきた
歓声は「峯山」と呼ばれるヤマザクラの群落のある所で、反対側の尾根や住宅地から見ると全山がヤマザクラの花に覆い尽くされるうっとりするような景色の広がるところからだった。2、3年前までは実際に近づいてみると深い笹薮に覆われていてサクラに近づくことも出来なかったのだが、奇特な人が所有者である県に掛け合って整備を申し出、徐々に笹薮が刈り取られて行き、今ではすっかり眺望の良いサクラの下の広場が出来上がっている。ボランティアさんたちのおかげなのだ。
シーソーや近くのモウソウチクを使った滑り台などもボランティアの手作りで出来ているので、ふもとの幼稚園や保育園児たちが保母さんたちに連れられて遊びに来るようになってはしゃいでいる
頂きの2本ばかりが5、6分咲きになっていたが…
しかし他の木々たちの目ざめはもう少し先になりそう
とにかく目に入る木々のほとんどがヤマザクラなのだ
相模湾が見える
山頂から下ると「桜道」という札が掛けられた細い道が桜の木々の間を縫って伸びていて、ボランティアの人たちが植えたとみられるナノハナが咲いていた
満開のヤマザクラの時期と重なると絵になりそう
さらに尾根道をたどって行くと、さっきの幼児たちが満開のヤマザクラの下、草の上に座ってお弁当を食べていた
上野公園に集まる人々とは比較にならないくらい上品で柔らかな日差しを浴びて嬉しそう
このヤマザクラは峯山が切り開かれる前から知っていて、よく見に来ていた
ただ尾根道に分け入る人影は少なく、月曜日ということもあるのだろうが、この子供たち以外は初老の夫婦連れ一組だけだった
尾根道をたどっていくと思わぬところでヤマザクラに出会う
ふと顔を上げると頭上に覆いかぶさるように咲いていてびっくりしたり…
ほとんど人目に付かないところで咲いている花に出会うと嬉しくもなる
足元に目をやればキランソウが咲いている。この花には「地獄の窯の蓋」「医者殺し」と何とも物騒で恐ろしい別名が付けられている
地面に張り付くように放射状に広げた葉を地面に開いた地獄の入り口をふさぐ蓋に見立てたところから名づけられたらしい。様々な病気に対して薬効があるため、地獄に行く道に蓋をして蘇生させてしまうというありがたい意味が込められているとか。
で、医者も必要なくなるから「医者殺し」。
漢方では「金瘡小草」と名付けられている。「金瘡」とは刀傷のことで、キランソウの葉をすりつぶして切り口に塗ったり、腫物にも効果があるとされているそうな。
ヒトは見かけによらないが、クサだって見かけによらないのだ。
春先の尾根道ではタチツボスミレと一緒に咲いている光景をよく目にする
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