先日30日の湘南海岸自転車道パトロール。
毎年のことだが、春が近づいて日本海を北上する低気圧があると、その影響で太平洋側の相模湾沿岸では南西の強風が吹き荒れる。
コンクリートで覆われた都会では、単に「風が強い」だけで済むが、波打ち際に沿って自転車道が設置されている湘南海岸一帯では吹き飛ばされる砂で自転車道がすぐに埋まってしまう。
鹿児島県人が「北国の冬が積雪で大変なのはわかるが、雪は春になれば自然と解けちゃうんだから始末がいいさ。こちら桜島が噴き上げる噴煙に混じって降ってくる火山灰は太陽が出たって解けないどころか雨でも降ればドロドロになって始末に負えなくなる」とボヤく。
まさに同感で、自転車道に積もった浜辺の砂が解けてなくなるわけはないし、人の手で片付けるしか方法はない。
湘南海岸一帯を管理する県の土木事務所長が気の利いた人であればこまめに除砂作業を行って堆砂を片付けてくれるが、これが、自転車道への理解に欠ける人物でも赴任すると、数か月も放置したまま知らん顔ということもある。
数年前には真冬に日本海を通過した大きな低気圧に吹き飛ばされた砂が人の背丈ほども積み重なり、あろうことか数か月もそのまま放置され、除砂されたのが5月の大型連休後だったということがあり、この時、県には相当な苦情が寄せられたと聞いた。
この一件の後は、少々の堆砂でもブルドーザー1台程度でこまめに除砂作業するようになり、今に至っているのだが、今年は強風の吹く頻度が高く、しょっちゅう道路が砂に埋まっている。
そんなわけで、手が回らないところもあると見えて、いつ行っても砂に埋まったままのところが何か所かあった。
それがやっと30日になって、手が付けられていなかった場所でも重機が数台動き始めている光景に出くわした。
「おっ、ついに後片付けの手が届いたか」と喜んだが、どうも様子がヘンである。
堆砂部分の砂をどかしているだけにあらず。海浜植物に覆われた部分まで大幅に崩してしまって、砂をどかしている。
まさか自転車道路の拡張ではあるまいし、どういうことかと首をかしげたが思いつくことがあった。
ここ2,3年、自転車道沿いで飛砂を防止する柵を二重にする工事が進められていて、どうやらここもその二重柵にするため、新たに設置する柵のスペースを確保するために既存の起伏を切り崩し、平らにしてしまっているらしかった。
まったく余計なことを!
飛砂防止に海浜植物で砂を覆うという方法は、一見悠長なように見えて自然環境の面からも、あるいは美しい海辺の景観を維持・保存して行くためにも有効だと思うのだが、それをかなぐり捨てるとは…
しかも、一体は自転車沿線でも海浜植物の繁茂が顕著なところで、"緑の砂浜"が美しい景観を作り出しているところなのに。
例え防砂柵を二重にしたって、既存の二重柵の場所を見れば一目瞭然、一重よりはましだとしても堆砂の山は出来てしまうのだ。
それならハマヒルガオやハマゴウなど、季節になれば奇麗な花を咲かせる植物に頼った方がよっぽど気が利いていると思うのに…
海浜植物を生かす方策に予算を振り向けるって考えはないのかね。
まさか、除砂作業に従事する業界? や労働に従事する人の雇用優先ってわけじゃないだろうな。
寄ってたかって甘さを噛みしめられるほど大きなパイのはずもないけど…
問題の堆砂場所
重機が何やら作業を始めたなと思ったら…
波打ち際寄りの一段高くなっている部分まで崩し始めている
キャタピラーのついたダンプで砂を運んでいた
せっかくの海浜植物がはぎとられて行く…
現場付近はこんな感じで"緑の砂浜"が美しい所♪
これは別の場所だが、植物の繁茂が進めばこういう景色も出現するのに
現場はこんな具合で、自転車は押すしかないから除砂作業は必須だが
この左手の一段高くなった部分もいずれ平らにされ、二重柵が出来ることだろう
ここは早くから二重柵が出来ていたところだが、二重柵の"実力"はこの程度だ
ひどい場合は、こういう状態が数百メートル続くから強風の威力はすさまじいものがある
砂がない時の上の写真の場所はこんな感じ
これは今年1月中旬の撮影だが、自転車道は完全に埋まってしまっている
この場所は3月までに二重柵に作り替えられ、今のところ効果はそれなりに出ているみたい
この時は重機2台でせっせと片付けていたが、低気圧と海砂の関係はギリシャ神話の「シーシュポスの岩」を思い起こさせる
何度も何度も同じことを繰り返さなければならない…
この堆砂の時は作業が一時中断され、残された「壁」のためにこれ以上先に進めなかった