天中殺みたいな1日だった。
まずは、ぶらりと立ち寄った北鎌倉の東慶寺境内での出来事。
この寺には木造聖観音立像や水月観音像など魅力的なホトケがあるのだが、ご本尊の控えめな彩色が美しい釈迦如来坐像も好きな仏像の一つで、たまたまほかに観光客の姿も無かったので正面に正座して、しばらくじっと眺めていた。
それで気分良く庭に出て散策を始め、アジサイやらハナショウブやらを撮影していた時の事…
ボクの視界に垣根を乗り越え、他の植物を踏んづけながらきれいに咲いているハナショウブに近づいて行って写真を撮る若い女性の姿が映った。
この寺のハナショウブの咲いている場所は、うっそうとした草むらのような自然のままにしているところで、多くの季節の花々が絡み合うように自然な状態で咲いている、と言うか咲かせている庭で、観光客が境界線のロープをまたいで中にズカズカと入り込み、写真を撮るような場面には当然のことながら一度も出くわしたことはない。
それだけに唖然とさせられた。
その時、直感的に思ったのが、注意すべきか否か。
たかだか3、4mほどの距離しか離れていない。
少し大きな声を出せば十分に相手に通じる距離である。
でもやめておいた。
ああいうことを平気でする連中は指摘されればふてくされるだけだろうし、七面倒くさいことはやめておこうという気持ちだった。
見なかったことにすればいいだけだ…
こういう時、損するのは目撃しちゃったほうで、心にトゲと言うか、もやもやが残るのが癪に障るが、仕方がない。
東慶寺ではもう一つ愉快ではない場面があった。
宝蔵の売店でのこと。
本堂の裏手の崖に6月になるとイワガラミという植物が崖一面に白い花を咲かせて、この寺の名物の一つに数えられ、例年特別公開されてきたのだが、今年はどうなっているのか確かめようと思い、売店にいた女性の従業員に質問したのだ。
するとイワタバコと間違われたり、挙句の果てに「もう花は咲き終わりました」と、思わぬことを言われた。
帰ろうと山門に向かい、本堂裏手の崖がチラッと見えるところに視線をやると、なんと崖が白くなっている!
花が咲き始めたか、つぼみが膨らんで開く寸前までなっているってことじゃないか…遠目だからよく分からないが、咲き終わったとは信じがたい。
知らないなら「分かりません」と言ってくれればいいだけの話なのに…
お寺に時間を区切って雇われているだけの人のようだから、目くじら立ててもしょうがないが、ちょっと残念。
次は珍しく公開されていた長寿寺でのこと。
初夏と晩秋の2度だけ、ほんの2、3日の間だけ公開される寺で、たまたま通りがかったら公開されたので拝観してきた。
内部の観覧も許されていて、庭に面した小方丈には緋毛氈が敷かれたところに座布団が並べられていて、「座ってゆっくり庭を眺めてください」と案内書きがあったので、坐禅を組んでしばらく風の音を聞いていた。
当然のことながら「おしゃべりはしないでください」とも書かれていたが、守らない人も当然いる。
無視!
拝観を終えて寺の通用口に止めた自転車のカギを外していると、小方丈でべちゃくちゃしゃべり続けていた中年過ぎの女性2人が、あろうことかボクのすぐ目の前にある竹竿の通行止めを取り除いて外に出ようとし始めた。
「出口は30mほど先ですよ。ココは出口じゃありませんよ」と言うと「じゃアンタはどこから出たのか」と逆に非難するような口ぶりである。
「ボクはちゃんと出口から出ましたよ」と言うが相手は信じない。
竹竿をがたがた揺すりながら外に出てしまった。
呆れたね、ホトホト…
もう一つあるんだ。
家に戻って午後3時過ぎに散髪に出かけた。
ボクの隣の席は常連らしいジーさんである。座った瞬間からおしゃべりが始まった。
この店は客にマスクを外してくれと言う。耳に懸かるヒモがハサミを使う際の邪魔になるのだろう。
山の神が使っている美容院は紐のないほっぺたに張り付けるマスクを使っているらしい。
そういう店もあるのだ。
ここからが本題。
マスクをしてしゃべるならいざ知らず、外したら黙っているのがキョービのエチケットってもんだろう。
それをジジイのくせにべちゃくちゃべちゃくちゃ。
よっぽど「マスクを外したら黙ってろっ!」と怒鳴りつけたいところだが…
ボクの頭は10分もすれば終わるから、それまで息の回数を減らそう(出来るわけないが…)と我慢した。
店も店だ。
いくら常連のジーさんだからって、「ほかにお客さんもいるし、ご時世だからマスクを外したらなるべく話すのはやめましょっ」って何で言えないんだ。
かくして精神修養を強制された日で、言い換えればやっぱり天中殺。やれやれ…
北鎌倉から亀ヶ谷津切り通し急坂を抜けて海蔵寺に向かおとすると長寿寺が一般公開されていた
本堂
本堂から観音堂を望む
小方丈に面する庭を眺めながら10分ほど坐禅を組んでジッとしていた
茅葺の観音堂
何の意味があるのか、大きな鬼瓦が一つポツンと…
観音堂の横に階段を登る
足利初代将軍。足利尊氏の墓
尊氏の死後、尊氏の屋敷があったこの場所に第4子の基氏が父親の菩提を弔うために建てられたのが長寿寺と伝えられる
観音堂裏手の小高い所にはモミジの大木が多く、紅葉の時はさぞ見事かと…
庭はよく手入れされている
小方丈(左)と本堂
左が小方丈、続いて書院のある建物、右が本堂(iphoneでパノラマ撮影)
(見出し写真は小方丈と青のグラデーションが見事なアジサイ)