平方録

お腹が満ちていればこそ…

テレビのありふれた情報番組をなにげなく見ていたら、わが街の2つの繁華街のうちの一つを特集していて、いつも気にも留めずに店の前を通り過ぎていた中華料理店の味が良く、しかも海岸通りにあるウナギの名店の姉妹店だと知って、がぜん興味を惹かれたのである。
で、妻に誘われて散歩がてら1時間の道のりを歩いて昼ご飯を食べに行ってきた。

午後の1時を回っているというのに店内のテーブルはほとんど埋まっていて、入れ替わり立ち代わりひっきりなしに客が入ってくる。
客の年齢層はやや高めだが、なじみ客ばかりと見えて注文するにもよどみがない。
わが夫婦はといえばメニュー表をタメツスガメツした挙句、妻はテレビの勧めに従いチャーハンの、それも一番シンプルな「卵チャーハン」を、ボクはその日のランチの「鶏と玉ねぎ炒めのあんかけ」を注文する。

先に出来上がってきたのは卵チャーハンで、特段変哲のないものの、卵の黄色とご飯の間に見え隠れするグリンピースの緑色の対比が美しく、見た目にとても食欲をそそられる一品である。
一口食べさせてもらったが、米粒が一つ一つパラパラと離れ、いい具合に炒められていて、何より味が上品でおいしいのにびっくりした。さすが看板メニューだけのことはある。
鶏と玉ねぎ炒めのあんかけは、量がややが少ないんじゃないかと思ったのと、軍配を上げるとすれば卵チャーハンの方なのだが、こちらも味は良かったのである。
さすがに並みの中華料理店とは違うようだし、客が途切れないというのが何より実力を証明している。
ほとんどの品にハーフサイズの設定があるから、一皿分の値段で2種類の料理を食べることができるのだ。元気の良い人は3種だってありである。
そのあたりも人気の秘密なんだろうか。
今まで何十年と店の前を素通りしてきたのがもったいなく感じられたものである。

この日も前日に引き続き北風の冷たい、寒い1日だったのだが、気持ちよく晴れていた。しかるに、われわれ夫婦が家を出て歩き始めると曇り始め、すぐに晴れるだろうと思っていたのに逆に全天が雲で覆われていき、食事をして店を出るころには雨までちらつき始めた。
夕飯用にアンコウの切り身を買い、バス停で降りて家に向かっていたら雷鳴が轟くありさまで、家に着くと間もなく雪が降り始め、見る見るうちに庭が白くなったと思ったら、突如雨に変わってしまい、雪も解けてしまうという目まぐるしさである。

この日は南九州やら四国の太平洋岸の、普段はめったに雪などチラつかない地方にかなりの積雪があったようで、東海地方から西にはかなりの積雪がありそうだと、天気予報が繰り返している。
わが地方には縁がないのが幸いだが、乾いた風はやけに冷たく、骨身に染みるとはこのことで、しみじみ春が待ち遠しい。

わが家の鍋はしょっちゅうで、今冬は寒いからその頻度も増している。
カキ鍋はカキからにじみ出るエキスのおかげで残りのスープの一滴までおいしく、おじやもおいしいのでわが家の冬の定番だが、手製の鶏団子の鍋もお気に入りである。献立が決まれば喜んで団子をこねるのである。
キムチ鍋なんてぇのも初めて試してみたら案外行けた。納豆入りにしたのがよかったのかもしれない。
アンコウ鍋にも初挑戦し、味噌を控えるなどして食べてみたらアンコウの味が味噌に邪魔されることなく味わえ、これまたおいしく、しかも妻にはコラーゲンも好都合なようで、2度目のアンコウ鍋と相成った。

鍋物というのは具材さえ用意すれば後は土鍋に放り込んでぐつぐつやっていれば、それぞれの具材が持っているうまみが自然とにじみ出てきて、しかも体が温まるのだから、こんな重宝で簡便な料理はない。
鍋の場合はだいたいボクが用意して味付けまでするから、妻の手をあまり煩わせないで済み、その意味では妻孝行でもあるのだ。
と、こじつけては見るものの、やっぱりおいしくて暖まるというのが最大の眼目で、利点ですナ。



肝のエキスがにじみ出て味を盛り立てる今冬2度目のわが家のアンコウ鍋




思いがけずおいしかった卵チャーハン(上)と鶏と玉ねぎ炒めのあんかけ


家にたどり着いたら、雪がこのとおり…
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