のどに刺さった魚の小骨のように、気にし始めると気になってどうにも仕方がない。
かと言って寒風に身をさらしてまでやる気にもなれず、やれ今日は北風が冷たいとか、曇っていて日差しがないから意気が上がらないとか、様々に理由をつけては先送り先送りを重ねしてついに1月も下旬に入ってしまった。
そら見ろ、焦ってないと言いながらやっぱり焦ってるんじゃないかと言われそうだが、やっぱりそうじゃなくて、落ち着かないの一言なのだ。
所詮は小心者なのだ。
残されていた鉢植えのバラ2本とつるバラのせん定を昨日、ようやく終わらせた。
特に気になっていたつるバラは20年ほど前に妻の親類のバラ好きの女性からいただいた株だが、剪定はおろか手入れもせずにフェンスに絡めていただけなのだが、生まれつき丈夫な品種だったと見えて、まがりなりにも花を咲かせ続けてくれていたのだから「健気」という言葉がぴったりくるバラなのである。
それがきちんとせん定をし、寒肥まで施して世話を焼くようになったのはホンの5、6年前のことだ。
すると花のつきは見違えるように増え、株を覆い尽くして尚次から次に咲きこぼれるように咲いてくれて、これにはバラも気が狂ったように見える時があるのかと思うくらいの勢いだった。
実はこのバラ、親類女性の創作バラである。
もちろん、何かと何かを掛け合わせて生み出したのだし、戴いた時に聞いた覚えがあるが既に忘却の彼方で、今となっては馬の骨の類でしかない。
従って漱石の猫のように名前も無い。
小花を房状にたくさん咲かせるタイプのバラで、株全体を花で覆うように咲くのが特徴らしい。
肝心の色は赤色がやや強めに出た明るいピンク系統の色合いで、見た目にとても鮮やかで遠目にもよく映える。
香りは全くと言ってよいほどない。
このバラのせん定を最後に回したのは最初から意図したことで、花をつけるのが5月の下旬と一番の寝坊助だということもあるが、それだけ念入りにやりたいということの裏返しでもあるのだ。
そして、育ての親というのもおこがましいのだが、何とか恩に報いてせめて名前だけでも付けようと思っているのだが、なかなかしっくりくる名前が思い浮かばない。
名無しの馬の骨ではいくらなんでもかわいそうである。
こうなったら天の啓示でも降りてこないかしらん。
かくしてのどに刺さっていた小骨も取れ、腰も少し疼き始めるそぶりを見せたので、せん定作業の打ち上げと腰の癒しを兼ねて稲村ケ崎の温泉に浸かりに行った。
例の琥珀色をした黄金の湯である。
琥珀色と言えばもう一つ魅惑的なものがあるが、それは後のお楽しみで、ともかく相模湾に沈む夕日を眺めながら琥珀の湯と夕焼けに染まろうと出かけたら、考えることは似たり寄ったりと見えて10人余りが湯から首だけ出して同じ方角を見詰めるという珍妙な光景が出現した。
昨日の日没は17:00ちょうど。
ただ水平線ではなく伊豆の山に沈むので、それより4、5分早く稜線に消えていった。
ああして眺めていると、地球ってやつは案外のスピードで回転していることが分かるのだ。
降り落としてもらいたい人間が何人かいるんだけどなぁ…
円覚寺でタイワンリスが近寄ってきてひとしきりパフォーマンスを見せてくれた
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