「大阪維新の会」はこの秋にも「都構想」をめぐる住民投票の実施を目指していますが、「都構想」については賛成・反対といろいろな意見がメディアやSNS上でも流れています。そもそも「都構想」の何が問題なのか3つの論点でまとめてみました。
1 市民の意見がまったく取り入れられていない
「都構想」案については、前回の住民投票の時にも示されていますが、その内容が時々刻々と変化しています。
その原因は、反対派やメディアから問題点を指摘されるたびに修正を繰り返し、日々進歩(?)してきたからでしょう。特に公明党が「都構想」に賛成する条件として示したいくつかの提案を取り入れたため、特別区への移行の経費を抑えるとして新庁舎建設が見送られ同じ特別区の職員であるにもかかわらず遠い庁舎に配置されることになるなどより複雑怪奇なものとなりました。
「都構想」の案は大阪市役所、大阪府庁の職員と「大阪維新の会」の議員らが作っておられるのでしょうが、市民の意見や実際に現場で市民サービスにあたっている職員の意見などまったく聞かずに会議室で練り上げられたものでしょう。
本来こういった市民の生活に直接かかわる政策は政策形成段階から市民の意見を十分に取り入れて制度設計していくべきものです。にもかかわらず、まったくそういったプロセスは取られていません。大阪市民の意見が全く反映されていない政策、それが「都構想」なのです。私はそのことが「都構想」の一番の問題点だと思っています。
2 行政研究者の賛成意見がほとんどない
「都構想」により1兆円を超える経済効果が見込めるとしている点については、根拠となる嘉悦大学の検証そのものが専門家の間では批判が多く、この論文を支持する学者が皆無ということが、いかにその根拠が怪しいかということを証明しています。
そもそも「都構想」の経済効果を大阪市役所が研究者に検証してもらおうと公募をかけたにもかかわらず1回目は応募者がおらず、2回目で何とか嘉悦大学の高橋洋一氏が引き受けたものですが、高橋氏は大阪市役所の顧問で「都構想」推進派であったということを考えれば、その検証にはバイアスがかかったものと考えざるを得ないでしょう。
その一方で、京都大学の藤井聡氏のように、「都構想」の経済効果はほとんどなく費用だけがかかると批判する学者はたくさんいらっしゃいます。
高橋氏のように大阪市役所とかかわりがあった学者以外で「都構想」を積極的に擁護し推進しようとする巷の学者は皆無です。
このように「都構想」の問題点のもう一つは、行政の研究者のほとんどが反対しているにも関わらず強硬に推し進めようとしている点です。
3 住民投票は白紙委任状なのか
大きな問題点の三つめは、「大阪維新の会」の意向を受けた大阪市役所はそういった反対意見は全く耳を貸さず、新聞や広報などのおおやけのメディアでは賛成意見だけを流すという偏った情報発信をしています。これはあまりにも不公平であり住民を間違った方向に誘導しようとしているとしか思われず、住民が正しい判断ができるとは思われないのです。そのような状況でその是非について大阪市民に大阪市役所を廃止するかどうか、しかも失敗したからと言って元に戻せない非常に思い責任のある選択を迫ろうとしています。効能書きだけで副作用や禁忌事項が書かれていない薬の説明書と同じようなもので、飲み方を間違えれ大変なことになるのです。
「大阪維新の会」の方々にとしては、「要は大阪市を廃止して特別区をつくるということに賛成か反対か決めていただいたらいいんです。決まってから改めて細かい制度設計をします」と言いたいんでしょうが、それでは住民投票は白紙委任状を大阪市民に求めているということと同じことになります。これが三点目の問題点です
4 「大阪維新の会」の皆様にお願いします。
そのために以上のことを踏まえて、以下のことを強く要望します。
① 賛成、反対意見にかかわらず、多くの市民の意見を十分に聞く機会を設けてください。
② 専門家の意見を素直に聞く耳を持ってください。賛成派の意見が少ないという事実も謙虚にとらえ、専門家の意見を十分に聞きながら、「都構想」ありきの前提を外して白紙の状態から、未来型都市行政の在り方を議論する場を設けてください。
③ 住民投票には公平な情報提供が必要です。「大阪維新の会」の意見だけではなく、大阪市議会などでの議論の中で出てきた様々な意見を公平に伝えるために、広報などのメディアや報道機関への資料提供においても公平な情報提供を行ってください。
5 最後に
現在の「都構想」議論は、民主主義における政策決定のプロセスを少し逸脱しているように感じます。「大阪維新の会」の方々は、万博やカジノなど華々しい政策実績でもって人気得て、その支持基盤をもって「都構想」の実現を強引に進めておられるようにも感じます。「都構想」の議論は「大阪市役所の廃止」という大阪市民だけでなく大阪府民、日本国民にとっても将来にも影響を及ぼす重大な選択を迫られている議論です。そのような重大な議論を、しかも一旦は大阪市民により否決された政策案を再度大阪市民にその是非を問うというものですから、十分な議論がなされなければなりません。もう一度原点に帰り「都構想」の議論を進めていただきたいと思います。
1 市民の意見がまったく取り入れられていない
「都構想」案については、前回の住民投票の時にも示されていますが、その内容が時々刻々と変化しています。
その原因は、反対派やメディアから問題点を指摘されるたびに修正を繰り返し、日々進歩(?)してきたからでしょう。特に公明党が「都構想」に賛成する条件として示したいくつかの提案を取り入れたため、特別区への移行の経費を抑えるとして新庁舎建設が見送られ同じ特別区の職員であるにもかかわらず遠い庁舎に配置されることになるなどより複雑怪奇なものとなりました。
「都構想」の案は大阪市役所、大阪府庁の職員と「大阪維新の会」の議員らが作っておられるのでしょうが、市民の意見や実際に現場で市民サービスにあたっている職員の意見などまったく聞かずに会議室で練り上げられたものでしょう。
本来こういった市民の生活に直接かかわる政策は政策形成段階から市民の意見を十分に取り入れて制度設計していくべきものです。にもかかわらず、まったくそういったプロセスは取られていません。大阪市民の意見が全く反映されていない政策、それが「都構想」なのです。私はそのことが「都構想」の一番の問題点だと思っています。
2 行政研究者の賛成意見がほとんどない
「都構想」により1兆円を超える経済効果が見込めるとしている点については、根拠となる嘉悦大学の検証そのものが専門家の間では批判が多く、この論文を支持する学者が皆無ということが、いかにその根拠が怪しいかということを証明しています。
そもそも「都構想」の経済効果を大阪市役所が研究者に検証してもらおうと公募をかけたにもかかわらず1回目は応募者がおらず、2回目で何とか嘉悦大学の高橋洋一氏が引き受けたものですが、高橋氏は大阪市役所の顧問で「都構想」推進派であったということを考えれば、その検証にはバイアスがかかったものと考えざるを得ないでしょう。
その一方で、京都大学の藤井聡氏のように、「都構想」の経済効果はほとんどなく費用だけがかかると批判する学者はたくさんいらっしゃいます。
高橋氏のように大阪市役所とかかわりがあった学者以外で「都構想」を積極的に擁護し推進しようとする巷の学者は皆無です。
このように「都構想」の問題点のもう一つは、行政の研究者のほとんどが反対しているにも関わらず強硬に推し進めようとしている点です。
3 住民投票は白紙委任状なのか
大きな問題点の三つめは、「大阪維新の会」の意向を受けた大阪市役所はそういった反対意見は全く耳を貸さず、新聞や広報などのおおやけのメディアでは賛成意見だけを流すという偏った情報発信をしています。これはあまりにも不公平であり住民を間違った方向に誘導しようとしているとしか思われず、住民が正しい判断ができるとは思われないのです。そのような状況でその是非について大阪市民に大阪市役所を廃止するかどうか、しかも失敗したからと言って元に戻せない非常に思い責任のある選択を迫ろうとしています。効能書きだけで副作用や禁忌事項が書かれていない薬の説明書と同じようなもので、飲み方を間違えれ大変なことになるのです。
「大阪維新の会」の方々にとしては、「要は大阪市を廃止して特別区をつくるということに賛成か反対か決めていただいたらいいんです。決まってから改めて細かい制度設計をします」と言いたいんでしょうが、それでは住民投票は白紙委任状を大阪市民に求めているということと同じことになります。これが三点目の問題点です
4 「大阪維新の会」の皆様にお願いします。
そのために以上のことを踏まえて、以下のことを強く要望します。
① 賛成、反対意見にかかわらず、多くの市民の意見を十分に聞く機会を設けてください。
② 専門家の意見を素直に聞く耳を持ってください。賛成派の意見が少ないという事実も謙虚にとらえ、専門家の意見を十分に聞きながら、「都構想」ありきの前提を外して白紙の状態から、未来型都市行政の在り方を議論する場を設けてください。
③ 住民投票には公平な情報提供が必要です。「大阪維新の会」の意見だけではなく、大阪市議会などでの議論の中で出てきた様々な意見を公平に伝えるために、広報などのメディアや報道機関への資料提供においても公平な情報提供を行ってください。
5 最後に
現在の「都構想」議論は、民主主義における政策決定のプロセスを少し逸脱しているように感じます。「大阪維新の会」の方々は、万博やカジノなど華々しい政策実績でもって人気得て、その支持基盤をもって「都構想」の実現を強引に進めておられるようにも感じます。「都構想」の議論は「大阪市役所の廃止」という大阪市民だけでなく大阪府民、日本国民にとっても将来にも影響を及ぼす重大な選択を迫られている議論です。そのような重大な議論を、しかも一旦は大阪市民により否決された政策案を再度大阪市民にその是非を問うというものですから、十分な議論がなされなければなりません。もう一度原点に帰り「都構想」の議論を進めていただきたいと思います。