雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載122)




韓国ドラマ「30だけど17です」(連載122)



「30だけど17です」第14話(2人きりの夜)⑦


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)


★★★


 ソリは走っていって楽器の修理店に駆け込んだ。修理職人の前に立った。
「お金です」
 顔を上げた職人に言った。
「今日は確認だけです。来月、お給料が出たら、残りのお金を持っていただきに来ます」
 職人は黙ってソリを見た。
「まだお金が足りなくて…」
「それで十分だよ」
 作業に戻りながら職人は答えた。
「えっ?」とソリ。「ここにあるお金を確認しないと」
 小箱から集めたお金を取り出した。
「ユーロはダメだ」と彼。
「ではこれは両替して」
「いいんだ。それも置いて帰りなさい」
「では、足りない分は今度…」
 職人は手で”行け”のしぐさを見せる。
 バイオリンが高価な物で修理代が破格なはずなのはソリも分かっている。
 もうしわけなさでためらっていると、携帯用のスコッチティッシュがポンと置かれた。
「その手で楽器に触るつもりか?」
 ソリははにかんだ。 
 小麦粉や野菜を混ぜくったそのままの手でここに駆け付けたのだ。
 ソリは店のおじさんの親切を受け取り、バイオリンの入ったケースを背負った。挨拶して行こうとすると職人の姿に戻って彼は言った。
「もう来るなよ」
「えっ?」
 振り返ったソリは仕事に戻った彼の言葉を理解した。
「はい。二度とバイオリンをダメにしません。このバイオリンのことでは二度と来ません」
 店を出ていくソリを見て店主は笑みを浮かべた。
「バイオリン好きとしてはあの娘の演奏姿も見てみたいものだが、その日は来るのかな…?」
 家に戻るソリの足取りは軽かった。


★★★


 好きな音楽をスキャットしながら帰り着くと、見覚えのある人が家の前に立っている。
「先生〜♪」
 ソリはシム・ミョンファンに歩み寄った。
「どうしてこちらへ?」
「近くまで来たので、どうしてるかな、と思って立ち寄ってみたんだ。それは?」
「はい。修理が出来たと連絡受けたので受け取りに行って来たんです。矢も楯もたまりませんでした」
「ほう〜、それはいいところに顔を出した。君の楽しそうな顔を見れただけでも足を延ばした甲斐もあったというもの」
「お言葉に甘えて、時間を見つけて練習に通おうと思っています」
「それは何よりだ。立ち話も何だから、時間があるならお茶でも飲まないか?」
「はい。音楽の話が聞けるなら喜んで」
 ソリは元気な声で応じた。


 チャンはドクスたちのところに顔を出した。
「体調はもういいのか?」
「まあね…」
「ミスター・コンからたっぷり愛情を受けていたね」
 ドクスは食い物を手にチャンをからかった。
「大根を買うついでに買ってきてくれたんだ」とヘボム。
 チャンは舌打ちした。
「こんな奴らに差し入れするくらいなら自分の腹を満たせばいいのに…」
 携帯が鳴った。
 ウジンからだった。
「まだ何か? 元気戻ったの見たでしょ?」
「おじさんだ」
 ヘボムたちはベンチから立ち上がった。
「おじさん、ごちそうさまです!」
 ヘボムが携帯に口を近づけて叫んだ。
「家でまた会いましょう」
 ドクスが続いて叫んだ。


 チャンはドクスたちから離れた。
 ドクスたちはベンチに戻って腰をおろした。
「ジェニファー?」
「ああ。ジェニファーとまだ話してないだろ?」
 車を走らせながらウジンは言った。
「電話しろ。彼女も心配してる。病床から戻ったんだから、その挨拶も忘れるな。家族同然でも礼儀を守らないとな」
「分かったよ。気をつけて」
 電話を切ってチャンは目を上向けにした。
「家族同然?」 
 チャンはいつかの食事を思いだした。
 ドクスとヘボムもやってきたいつかのコン家の食卓だった。
 皿に盛られたたくさんのチキンを見てチャンは愚痴ったことがあった。
「俺はチキンを食べないっていうのに」
 ドクスたち他、みんなの手は止まった。
 ウジンを見てチャンは言った。
「ピヤクを飼い始めて食べるのを断っているのに」
「チャン、家族はお前だけじゃないんだ」
「じゃあ、俺だけ食事抜き?」
 ウジンはチャンを睨みつける。険悪さが増した時、インターホンが鳴った。
 それを聞いてウジンの表情は和らぐ。
「豚足セットが到着だ」
「やったぜ」とドクス。「豚足セットだ」
「豚足!」
 チャンもそれで機嫌を取り戻したものだった。
「だからおじさん(ミスター・コン)は、みんなに優しくして、家族はお前だけじゃない、と言ったのか…。もう〜、あの写真が悪い。あの写真が」
 たまたま見つけたおばさん(ソリ)とおじさん(ミスター・コン)のツーショット写真。
 おじさん(ミスター・コン)は「あれは他人が勝手に撮ったもの」と説明していた。
 自分はあの写真で2人のことを勘違いしてたかもしれない。
 家族なら一緒に木の下に立ったりもするさ。部屋での出来事もありふれたことで笑っていたのかも…。ボタン付けだって誰にだってやってあげるさ。
 そうだ、間違いない。チャンは自分に言い聞かせた。おじさん(ミスター・コン)は家に愛着が生まれて来てるんだ。
 チャンがコンコンと携帯で自分の頭を叩いた。
「あまりに深読みし過ぎてた…!」
 チャンはビシッと自分に言い聞かせた。
「ユ・チャン、何事も大げさに考えるんじゃない」


 ベンチのヘボムはチャンを見て言った。
「チャンのやつ、さっきから1人で何をゴチャゴチャとパフォーマンスしてるんだ…?」
「ほっとけ」とドクス。「いつものことだ」
 2人は声を揃えて叫んだ。
「この大げさ野郎!」
 チャンは2人の許に歩み寄った。
「それ、おじさん(ミスター・コン)のおごりだろ?」
「ああ」
 ヘボムは親指を突き出した。
「最高だ」
「…これは俺のものだ」
 チャンはウジンの差し入れ袋をつかんで逃げ出した。
「こらっ、待て。コギソ〜っ!」
 ドクスたちは慌ててチャンを追いかける。


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