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アンナに一礼してユギョンは切り出した。
「元の場所へ戻れてよかったですね」
「…」
「そのせいか、お元気そうです。”過去に執着するな”と忠告してくれた人らしく…先日までのことはきれいさっぱり忘れてしまったようね」
アンナはユギョンの皮肉まじりの言葉を黙って聞く。
「まあ、金持ちの夫の元へ戻れば、当然、忘れたくもなりますよね」
「…」
「やけに自信満々だった理由が、それでよくわかったわ」
「帰国するそうね。どうぞお幸せに」
言うだけ言ってユギョンは行こうとする。
前方を見つめたまま、アンナはユギョンを呼び止めた。
ユギョンは立ち止まる。振り返る。アンナも振り返った。
「自信満々の理由はお金だというけど、ひとつだけ誤解してるようよ」
「…」
「そのお金は夫の物ではなく、ぜんぶ私の物だから」
アンナは背を返した。
歩き出しながら自嘲気味につぶやく。
「花束女にお金の自慢なんかして―だけど、ほかに言えることは何もないわ」
アンナは部屋に戻った。
ビリーが駆け寄ってきた。
「今までどこに?」
「外を歩いてきたわ」
「みんな驚いてたんじゃないか?」
「驚くというより避けられてた。私はいつも避けられてたようね」
「そんなことないさ。君が戻ってきたのをみんな喜んでる」
アンナは苦笑した。
ちょっと思案し、ビリーは切り出した。
「君が戻ってきたんだし、パーティーでも開こうか?」
「どうだろ? 私の帰りを待ってた人なんて…誰がいる?」
ビリーは困惑しながらアンナを見た。
「まあ、ここには君の友達もいないし…アメリカに行ってからやろう」
「友達はそこにもいないわ。自分がどんな人間かは自分が一番わかってる。ビリー、あんまり無理しないで」
そう言い残してアンナは階段を上がっていった。
アンナの心を開くことが出来ず、ビリーはため息をついた。
部屋に戻ったアンナはピンクの携帯を握った。チョルスの前で決めたお気に入りの色だ。この携帯には自分の素直な感情がこもっている。
携帯を開く。
「あの人が待っているのは…アンナでなくサンシルよ。だけど、サンシルはいない―私はアンナよ」
アンナは携帯を閉じた。
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