雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第12話(16)




 アンナは寝言で”ビリー”と呼んだ。夢にうなされていた。
「ビリーッ…!」
 アンナの声を聞いてチョルスはドアを開けた。彼女の体調をずっと気にかけていたのだ。
 アンナの様子を確かめ、そっとドアを閉める。
 彼女は誰かの名を呼んでいた。記憶を少しずつ取り戻し始めている。
 チョルスは物置小屋のドアを開けた。明かりをつけた。
 ここを改装してアンナに使わせようと思っていたのだが…。
「もうすぐ去るんだ」チョルスはつぶやいた。「部屋を作るのはやっぱりよそう」
 明かりを消してドアを閉めた。

 朝になった。アンナを座らせ、チョルスは食事の用意をしてやる。
「チャン・チョルス」アンナは言った。「私はコーヒーがいい」
「サンシル、チゲを飲めチゲを。身体にいいぞ」
 アンナは舌打ちして箸を握る。焼き魚に手を伸ばす。
 手が止まる。またひとつ思い出す。
「確かに魚だったわ。赤い魚…魚が跳ねたわ。ピチピチって」
 チョルスが訊く。
「刺身の店か?」
「食用じゃないわ。誰かが歌ってた時に…私が扉を開けて入った…」
「楽しい雰囲気をぶち壊したのか?」
「何だったか…思い出せない」 
「よく思い出せ。他にはないのか?」
「…転がる指輪も見た気がするし…それに妙なことも言われたわ」
「どんな?」
 アンナは必死に思い出そうとする。
「誰かと激しくやりあってた気が…考えるとなぜか気分が悪くなる」
「…?」
 チョルスは箸を握ったまま眉毛をへの字にする。
「以前の私は…どうやらそんなに幸せじゃなかったみたい。あんたはどう思った?」
「お前のことはよく知らなかったから」
「ところで昨日はなぜ私を呼んだの?」
「それは~、いや、何でもない。腹減ってないのか? ご飯食べろ」
 否定の意味がわからないが、アンナは黙ってご飯に手をつけた」

 部屋に戻ったチョルスは何を思い出したのかに首をかしげた。
「誰かと口論を? ほんとに闇だ。誰かが証拠を消したんだろうか? そんなことはまさか…」
 



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