雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載110)

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韓国ドラマ「病院船」から(連載110)






「病院船」第10話➡他人行儀⑨




★★★


 ウンジェはキム・スグォンの傍に行き、ジェゴルの握ってた釣竿を握った。
「ソン・先生は釣りの経験はあるか?」
「初めてです」
「覚えるといい。外科医にぴったりの趣味だ」
「…」
「頭を空っぽにする時間がたまには必要なんだ」
「分からないだろ?」
 ウンジェが頷くとスグォンは楽しそうに笑った。空を見上げて言った。
「ここはもともと無人島だった。知ってたか?」
「知りませんでした」
「大波にもまれかけた釣り人が見つけたんだ。とんだ災難だったが、
島を発見して開拓につながった。ピンチがチャンスに変わったんだ。
分からんもんだろ、人の運命は?」
 ウンジェは小さく頷く。
 しばし間があってキム・スグォンは言った。
「私にとって、君はこの島のような存在だ」
 ウンジェは院長を見る。キム・スグォンは横顔を見せたまま続けた。
「妻は命を落としかけたが、”島”である君に救われた」
「いいえ。私はただ…」
 キム・スグォンはウンジェを見た。
「次は私の番だ」
 ウンジェは黙って院長を見つめ返す。
「釣り人が島を開拓したように今度は私が君を支援したい」
 ウンジェは慌てて何か言いかける。だがその時、院長の携帯が鳴った。


★★★


「ああ、分かった」
 電話を受けた後、キム・スグォンはウンジェを見た。
「食事の準備ができたらしい。では行こう」
 ウンジェはやむなく頭を下げた。




 食卓は一階の眺めの良い場所に準備されていた。眼下には海が開けていた。
  
 食膳を囲むのはキム・スグォン夫妻にジェゴルとウンジェの4人だった。
「レストランより家庭の味を召し上がってもらいたくてここに招待したのよ」
 食膳を並べながらハン・ヒスクは言った。
 ウンジェはただ恐縮した。
「ここの家主とは親しい仲なの。遠慮なさらないで」
「ああ、はい」
「召し上がって」とヒスク。
 ウンジェは丁重に頷く。
「お口に合うかしら」
「母さんは自信あるくせにそんな言い方するの?」
 ジェゴルは軽口をたたく。
「私のような淑女は謙虚に振る舞うのよ」
 ヒスクはあえて座を和ませる。
「妻は前口上が長いんだ。遠慮せず食べなさい」
 ウンジェは初めて笑顔を見せた。
「この人、お客さんの前で何よ、もう…!」
 ウンジェは”クーッ”と吹き出しそうになる。それを見てキム・スグォンは笑い声を立てた。ジェゴルもほぐれた顔になった。
 ウンジェはしばし、ジェゴル一家の安らぎの中でくつろいだ。




 ウジェはヒョンから父親に連絡を取るよう促され、電話をかけ続ける。しかし、なかなかつながらない。
「ダメかい?」
「もう一度、かけてみて」
 と言ったヒョンの携帯が鳴った。
 かけてきた相手は”ジョンリム”。
 ヒョンはウジェを気にしながら電話に出た。
「電話をくれたのね」
「ええ。もしやヨンウンの居場所を知ってるかと思って」
「うちにいるわ」
「…! 代わってもらえる?」
 相手はややためらって答えた。
「さっき、出かけたの」
「体調は大丈夫そう?」
「ええ。いつもと変わらないですけど…で、どうなってるの。寄りを戻したの?」
「…ヨンウンがもどったらまた連絡して…ええ。ありがとう」
 ヒョンはウジェの前に戻った。
「まだ出ない?」
 ウジェは頷いてため息をつく。
「電話を無視することはないんだけどな」
 急に心配そうにする。
「まさか、どこかで倒れて出られないのかな…どうしよう」
「悪く考えないで」
 ヒョンはウジェの肩に手をおく。
「お父さんの携帯は君が契約を?」
「ええ」
「名義は?」
「僕の名前にしておいた。あっ!」
「そうだ。自分の名義なら位置追跡ができる」
「そうだった、やってみよう」
 ウジェは自分の携帯で2番目携帯の位置追跡を開始する。すると画面に位置が表示されたではないか。
「ここは…?」
「どこかわかる?」
 ウジェは頷く。
「そこへ車で連れてって」
 ヒョンたちは行動を開始した。




 ウンジェを気に入っているヒスクは自慢の料理を次々と箸で取ってすすめる。
「いただきます」
 恐縮しつつ勧められるおかずを口に運ぶウンジェに愛情を見せながらヒスクは言う。
「もっと食べないと先生は痩せすぎよ」
「はい、いただいてます」
 2人のやりとりにジェゴルは満足そうにする。
 この時、ウンジェの携帯が鳴った。
 ウンジェは病院からだと告げる。出なさい、と院長。
 ウンジェはテーブルから離れ、電話に出る。
「はい、カン先生。…ああ、分かりました」
 ウンジェはテーブルに戻る。
「何だった?」と院長。
「呼び出しです」とウンジェ。
「代打はどうした?」
「体調不良で欠勤したようです」


 院長は嘆いた。
「分かった。なら仕方ない。行きなさい」
 ヒスクは言った。
「まあ~、ゆっくり食事もできないのね」
 院長はジェゴルに言った。
「送ってあげなさい」
「そうね」とヒスク。「気を付けて」
 ジェゴルは頷いて立ち上がった。
 ウンジェは丁重に挨拶して上着を握った。


 
 ヒョンたちは一路、ソン・ジェジュンの許へ車を走らせた。







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