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韓国ドラマ「病院船」から(連載126)

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 韓国ドラマ「病院船」から(連載126)



「病院船」第12話➡あなたを突き放す理由②



★★★


 付きっきりのウジェの前で父親が急に苦しみだす。ウジェは慌てて誰かを呼んだ。
 介護士が飛び込んでくる。
 すぐにコードブルーがかかった。112号室に向かって医者たちが走る。
 ジェジュンの容体異変はウジェからウンジェに携帯で伝わった。
「姉さん、大変だ!」
「どうしたの?」
「父さんの様子が変なんだ」
 メソメソ声だ。
「ウジェ、落ち着いて。先生はもう呼んだ?」
 ウンジェはタクシーを拾って空港に向かった。
「ウジェ、よく聞いて。今、そっちに向かってる。気をしっかり持つのよ」
「わかった。姉さん、早く来て」
「大丈夫よ。何事もないはずだわ」
 携帯を切ってもウンジェは1人繰り返した。
「無事なはず、大丈夫なはずよ…運転手さん、急いで」
「急病人ですか?」
「…どうか無事で…大丈夫よ…運転手さん、まだ着きませんか?」
「それより最終便がもう発ったはずです」
「えっ?」
 ウンジェは動揺していた。冷静さを失っていた。
「運転手さん、どこかに少し止めてもらえませんか?」
 タクシーを降りるなり、ウンジェは道端でこみ上げる何かを吐いた。吐瀉物はなかったが、気持ちは少し落ち着いた。


★★★


 ヒョンは夜遅くまで島の患者のカルテ整理を続けている。
 彼は時計の時刻を見て考える。
「遅すぎるかな…」
 思い切ってかける。
「はい、ヘシム島の保健支所です」
「夜分にすみません。病院船の内科医です」
「はい、どうも」
「パク・ソンヨルさんに、明日空腹時に血糖を測るよう連絡したのですが…」
「忘れて食事してしまうはずです」
「そうですよね」
 ヒョンは苦笑する。
「私が朝早く訪ねてみますね」
「はい、お願いします。では」
 メモを張り付けていると携帯が鳴った。
 ウンジェからだった。
「あの…ウンジェだけど」
「ああ」
「…」
「何かあったのか?」
 ウンジェは話せないでいる。
「ソン先生、今どこ? 車の音が近いけど、どうして?」
「飛行機に乗りたかったけど、もう便がないの…今、駅に向かうところよ」
 ウンジェのグスグス声にヒョンは察知する。彼女は困ってる。何か切羽詰まってる。
「場所を教えてくれ。すぐ迎えに行く」
「いえ、私は大丈夫だから、ウジェのところへ行ってもらえない? 父が危険な状態なの…弟が1人で付き添ってる。だから…」
「分かった。僕が出向いてウジェのそばにいる。だから泣かずによく聞いて」
「…」
「お父さんはきっと大丈夫だ」
「…」
「僕が全力で守る。だから―気をつけて戻ってきて。道に迷わずに」
 ウンジェは涙が出て声が出せない。
「分かるね」
 ウンジェはため息とともに頷いた。




 ヒョンは巨済病院にやってきてジェジュンを看病した。
 深夜にウンジェも戻り、病床に顔を出した。
 ヒョンは容体について説明する。
「ドレーンから出血したが安定した。明日、検査を…」
「いいえ」とウンジェ。「すぐにでも手術させるわ」
「…」
「出血の原因は開腹して確認しないと…そうでないと」
「そこまでだ」とヒョン。「今日はもう―何も考えるな」
「…」
「僕がここにいるから君は寮に戻って…」
「いえ、もう大丈夫だから私が付き沿う」
「分かった。そうすればいい」
 ヒョンは病室を出て行った。ウンジェは追いかけて出てきた。2人は肩を並べる。
「ウジェが起きたら休め」とヒョン。「今日は勤務もないだろ」
「その…」


「今日はありがとう」
「…」
「辛い時に僕を思い出してくれて」
「…」
「行くから」
 ヒョンは笑顔を残して立ち去った。




「出血?」キム・スグォンは訊ねた。「深刻か?」
「出血性ショックが起きる前に開腹して―原因を突き止めるのが早道です」
 キム院長はため息をつく。
「手術を急ぐしかないな」
「はい」
「キム・ドフン先生はどうだった?」
「手術の予定が詰まっていて難しいと…」
「それが本当の理由か?」
 ウンジェは頷く。
「予定が詰まってるって本当か?」
「そうです」
「正直に言え。昔の確執で」
「いいえ、違います」
「…」
「父の手術は私が執刀します」
「ソン先生」
「このままでは手遅れになります。どうか手術をさせてください」
「…」
「何もせずに父まで―父まで失いたくありません」
 キム院長は険しい表情になる。
 ウンジェは医者生命をかけて父親を助けようとしている。自分も同様の境遇に置かれれば1人の医師としてそうするだろう。
 キム院長は顔を上げた。頷いた。
「やってみろ」
 ウンジェは破顔一笑で頭を下げた。
「ありがとうございます」 



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