雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第11話(6)




 ビリーは逃げるカンジャを必死で追いかける。
「コラーッ、早く写真を返せ。ちょっと待ってったら」
 広い道から木立を中を走ってカンジャは逃げ続ける。
「ワーイ、おじさんとお姉さんは結婚したんだ…!」
「はっははははは」
 ビリーは立ち止まる。
「冗談ですから…」
 公園で憩うおばさんたちに弁明してまた追いかけだす。
 ケジュたちは走り去る二人に向けて好奇の目を凝らす。
 カンジャがひと回りするとビリーもひと回りして必死で追いかける。

 ケジュは木陰から首を出した。
「この寒さの中でよくやるわねあの二人も…!」

 田舎道をどんどん走って追いかけたが、ビリーはカンジャを見失った。
「どこに消えたんだ? 本当にすばしっこいやつだ」
 ぜいぜい息を切らしていると後ろから声がかかった。
「次はおじさんが逃げて」
 ビリーはびっくりして振り返る。
「君、写真を返してくれ」
 カンジャのポーチに手を伸ばし中をまさぐる。
 しかし、その中から出てきたのはビリーたちの写真ではない。ドックの写真だ。
 カンジャはにこにこ笑った。
 この時、ビリーは自分の勘違いに気付いた。
「あの店の中か!」
 ビリーは急いで引き返していった。

 写真はカンジャ家の店の電話機のそばにあった。
 その店にチョルスが顔を出している。その写真立てにはまだ気付いていない。
 ドックが入ってきてチョルスに声をかける。
「何か飲む?」
「何でもいい」

 店に向かって駆け戻るビリーをカンジャは楽しそうに追いかける。
 しかし、ビリーはあの写真のことで気が気じゃない。
「あれを誰かに見られたらまずい。よりもよってこんな場所で…ほんとにヤバイ」

 元来た道に疾走していく二人を見てケジュは友達に話しかけた。
「見た目はまともなんだけどね」
 友達も相槌を打つ。
「ほんとね…」

 チョルスたちが休憩を取ってるところにビリーが駆け込んでくる。
 ビリーはチョルスを見て動揺する。
 チョルスもビリーを見るが誰か気付かずすぐ目を離す。
 ビリーは電話機のそばに写真立てがあるのに気付いた。しかし、いかにも間が悪い。幸いチョルスは写真に気付いていないようだ。ビリーは素知らぬ顔で電話機の方に回り込む。
 チョルスは言った。
「サンシルは周囲の人間に陥れられたんじゃないか?」
 ビリーはギクッとなった。
「じゃあ、誰かがわざと知らない振りをしてると…?」
「彼女に対し後ろめたい人間が…船や通話の記録を抹消したに違いない」
 二人の話にびくつきながらも、ビリーは写真立てを手にする機会をうかがっている。
 チョルスは続ける。
「その人間はサンシルの記憶がないのを知ってるかもしれない。ひょっとして」
 チョルスはドックを見た。
「彼女は大金持ちだった? 財産目当てとか?」
 チョルスの想像はたくましく、しかも図星だった。
 ビリーは気が動転した。自分の足元が脅かされつつあるのを感じた。

 

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