ビリーは逃げるカンジャを必死で追いかける。
「コラーッ、早く写真を返せ。ちょっと待ってったら」
広い道から木立を中を走ってカンジャは逃げ続ける。
「ワーイ、おじさんとお姉さんは結婚したんだ…!」
「はっははははは」
ビリーは立ち止まる。
「冗談ですから…」
公園で憩うおばさんたちに弁明してまた追いかけだす。
ケジュたちは走り去る二人に向けて好奇の目を凝らす。
カンジャがひと回りするとビリーもひと回りして必死で追いかける。
ケジュは木陰から首を出した。
「この寒さの中でよくやるわねあの二人も…!」
田舎道をどんどん走って追いかけたが、ビリーはカンジャを見失った。
「どこに消えたんだ? 本当にすばしっこいやつだ」
ぜいぜい息を切らしていると後ろから声がかかった。
「次はおじさんが逃げて」
ビリーはびっくりして振り返る。
「君、写真を返してくれ」
カンジャのポーチに手を伸ばし中をまさぐる。
しかし、その中から出てきたのはビリーたちの写真ではない。ドックの写真だ。
カンジャはにこにこ笑った。
この時、ビリーは自分の勘違いに気付いた。
「あの店の中か!」
ビリーは急いで引き返していった。
写真はカンジャ家の店の電話機のそばにあった。
その店にチョルスが顔を出している。その写真立てにはまだ気付いていない。
ドックが入ってきてチョルスに声をかける。
「何か飲む?」
「何でもいい」
店に向かって駆け戻るビリーをカンジャは楽しそうに追いかける。
しかし、ビリーはあの写真のことで気が気じゃない。
「あれを誰かに見られたらまずい。よりもよってこんな場所で…ほんとにヤバイ」
元来た道に疾走していく二人を見てケジュは友達に話しかけた。
「見た目はまともなんだけどね」
友達も相槌を打つ。
「ほんとね…」
チョルスたちが休憩を取ってるところにビリーが駆け込んでくる。
ビリーはチョルスを見て動揺する。
チョルスもビリーを見るが誰か気付かずすぐ目を離す。
ビリーは電話機のそばに写真立てがあるのに気付いた。しかし、いかにも間が悪い。幸いチョルスは写真に気付いていないようだ。ビリーは素知らぬ顔で電話機の方に回り込む。
チョルスは言った。
「サンシルは周囲の人間に陥れられたんじゃないか?」
ビリーはギクッとなった。
「じゃあ、誰かがわざと知らない振りをしてると…?」
「彼女に対し後ろめたい人間が…船や通話の記録を抹消したに違いない」
二人の話にびくつきながらも、ビリーは写真立てを手にする機会をうかがっている。
チョルスは続ける。
「その人間はサンシルの記憶がないのを知ってるかもしれない。ひょっとして」
チョルスはドックを見た。
「彼女は大金持ちだった? 財産目当てとか?」
チョルスの想像はたくましく、しかも図星だった。
ビリーは気が動転した。自分の足元が脅かされつつあるのを感じた。
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