雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(37)






韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(37)


「どうぞ」
 クムスンはおこわの入った入れ物をキジョンの前に差し出した。 
「何ですか?」
「おこわです。私が作りました。お口に合うかどうか」
「・・・」
「先日は気が動転しててお礼もできませんでした。ありがとうございます」
「この前も礼は聞いたよ。お嬢さん・・・ああ、若く見えるからついお嬢さんと呼んでしまう」
「私、ナ・クムスンです」
「じゃあ、クムスンさんと呼ぶよ」
「はい」
「子供・・・いや、フィソンは大丈夫でしたか?」
「はい。私に似て図太いのか、何事もなかったんです。私が丈夫なので」
「そうですか。若く見えるが、早くに結婚を?」
「はい」 
 クムスンは照れた。
「義父母と同居のようですが・・・?」
「同居というより――私を引き取ってもらっています。世話の焼ける嫁ですから」
 キジョンは相槌笑いした。
「道には迷わなかった?」
「いいえ。以前、この病院へ青汁配達で通っていました」
「じゃあ・・・今はどんなお仕事を?」
「美容師を目指し、美容室に勤務しています」
 キジョンは頷く。ほぼ、得た情報に沿っている。当人の気立てを観察しながら、確認しているようなものだった。
「お忙しいでしょうからそろそろ失礼します」
「いいえ、気にしないで。あの・・・家族におばあさんはいる?」
「はい、おります」
「お元気で?」
「いいえ。すごく痩せてて、健康ではありません。高齢ですし」
「そうですか・・・ちょうどよかった」
 キジョンは自分の机上に腕を伸ばした。書類を手にし、差し出した。
「よければおばあさんに健康診断を受けてもらえばどうですか?」
「・・・」
 キジョンは説明する。
「うちが開院10周年記念で――65歳以上の職員の家族を対象に無量健康診断をするんです。費用は全額病院で負担するようになってる」
「そんな・・・」
「受け取ってください。私には渡す相手もいない」
「・・・」
「好きなおこわをいただいたこともあるし、婚家で義父母と同居する君が感心したから」
「いいえ。お仕えするどころか面倒のかけっぱなしなんです。それに初対面でこんなものいただいては・・・」
「気にしなくていい。受け取って。この機会に孝行すればいい」
「・・・」
「受け取ってください。私がもらってほしいんだ」
「・・・では、遠慮なくいただきます。実は祖母の体調が思わしくなくて」
「ちょうどよかった。書かれている期間内に来ればいい。来る時は必ず私に連絡して」
「はい」
 キジョンはエレベーターの前までクムスンを送ってきた。
 エレベーターの乗ってからもクムスンは何度もお礼を言った。

 ウンジュは夢見る気分でジェヒに電話をかけた。電話をかけては自分の恋物語を育んだ。

 勤務明けで車を走らせるジェヒは何度目かのあくびの後、前方を歩くクムスンに気付いた。先ほど病院のエレベーターで会った。帰りらしい。
 クラクションを鳴らし、車を止めた。
 クムスンはびっくりした。
 車を覗き込んでクムスンは言った。
「驚かさないでください」
「挨拶しろと言っただろ。乗りな。送っていくから」
「けっこうです」
「送ってやるって」
「美容室には行きませんよ」
「わかってる。母さんも休みだ」
「ありがとうございます。では近くの駅までお願いします」
 それで乗ろうとするが、2ドアなので後部席に乗り込めない。
「何してる?」
「後部席への乗り方が・・・」
「後ろに乗るつもりか? タクシーじゃないぞ」
 結局、クムスンは後部席に乗った。
 彼女が助手席に乗りたがらないのはもちろん理由があった。
「9階には何の用だったんだ?」
「なぜ知ってるの?」
「エレベーターでそこのボタンを押したから」
「見てたのね。人に会いにきたんです」
「誰に?」
「ある先生にです」
「おい、白菜」
「・・・?」
「白菜頭だっただろ。なぜ髪を結う?」
「何となく・・・ところで、先生の髪は院長が?」
「そうだ。・・・どうして?」
「さすが院長は違うわ。カットも違うけど、先生の神経質そうな顔を――柔らかくカバーしてるわ。でも、前髪をもう少し切ればもっとよくなるのに」
「俺は現状で大満足の人間さ」
「それなら仕方ないですけど。それにしても――先生も性格を直せば完璧なんだろうに」
 クムスンは笑顔で言った。
 その顔をジェヒはバックミラーで見た。
「ただ、それだけです」
 前を見てクムスンは言った。
「そこの駅でおろしてください」

「おかげでバス代が浮きました。ありがとうございます」
 ジェヒはクムスンを見た。
「髪を・・・」
「?」
「解いたら? その方がいい」
「そうなんですけど――私じゃないみたいなので。それではまた」
 ジェヒはクムスンの後姿を目で追った。
 それからバックミラーで自分の顔を覗きこんだ。クムスンに指摘された前髪の辺りを指でさわったりし、ニヤッと笑った。
(彼女にやらせてみるのも面白そうだ・・・いや、口だけだろうな)

 クムスンは買い物を始める。
「サバと太刀魚をください。いくらですか?」
「これは3千ウォン。これは8千ウォン」
「下のをください」
 八百屋にも寄った。
「いくらですか?」
「千ウォンです」
 
 クムスンはスンジャの家に立ち寄り、料理をつくってみなに食べさした。
「お味はどうですか?」
「同居もムダじゃないわね。チヂミも焼けるし」
「もちろんです。マッコリもどうぞ。お好きでしょう?」
 スンジャは怪訝そうにする。
「何だか不吉だわ。また頼みごとでも?」
「違いますよ。フィソンのことで迷惑かけてるのにお礼もできずにいたから。口にはしなくても、とても感謝してます」
 クムスンの話に、よく聞きなさい、とばかりスンジャの顔色をうかがっているジョムスン。
「それにこれは・・・イカと貝を見たら今日は休みだったし、叔母さんも好物のチヂミを作ろうと思ったの。深い意味はないです」
「なんて優しい子なんだ」とジョムスン。
「ありがとう。わかってくれればいいわ。一番むなしいのは――苦労を認めてもらえないことよ。そうじゃないですか?」
「どうして私を見るの?」とジョムスン。
「いいえ、召し上がって」
 ジョムスンはクマを見た。
「そうよ。あなたも食べたらクムスンに優しくして」
「お義母さん・・・そしたら私が今までクムスンをいじめてたってことですか?」
「そんなんじゃないよ。さあ、いいからたくさん食べて」
 スンジャはマッコリを飲み始める。
「ママ、いっぺんに飲んだらまた大変なことになるわ。少しずつ飲んで」
「そうだ、おばあちゃん」
 クムスンはポケットから封筒を取り出す。
「ジャジャーン、これ、何だ?」
 ジョムスンの前にひけらかす。
「何なの?」
「健康診断の無料券。今日、お会いした先生がくださったの」
「見せて」
 とクマ。中から券を取り出す。
「あっ、これ、ガン検査までしてくれるのよ。すごいわ」
「そうなの?」
 スンジャも券を手にした。びっくりしている。
「かなり高いはずなのに本当に無料でくれたの?」
「そうよ。65歳以上の家族に限定されるんだけど、先生の家族には対象者がいないんだって」
「それで捨てるくらいならお前にやるといったわけね」
「でも、先生はどうしてあなたに? 誰もいないからとあなたに?」
「知らないの?」とジョムスン。「クムスンは誰にでも可愛がられるんだ。性格も抜群だし、外見だってすごく可愛い。好かれないわけないだろう」
「若い先生? 幾つなの?」
「どうして?」
「何かお前に下心でも・・・」
「バカなこと言うんじゃない!」ジョムスンは怒り出す。「何を考えてるの」
「だって、そうでしょう」
「違いますよ」クムスンは答えた。「年配のおじさんです。50歳過ぎの」
「そうなの」と納得したスンジャだが、次の言葉がいけなかった。「まさか、お前が後家ということを?」
 それを聞いて、クムスン他が一瞬で固まった。
「それは分からないけど、婚家で同居してることは知ってます」
 とクムスン。
「そう・・・」
 ジョムスンはいきなり円卓を持ち上げ、ひっくり返した。
 噴火したのだ。
「何だって? もう一度言ってみろ」

 見送りに出てきたジョムスンにクムスンは言った。
「いくら何でも食卓をひっくり返すなんて・・・!」
「叔母が姪にいうことじゃないだろ」ジョムスンはまだ怒っている。「嫁でなければ顔を引っかいていたわ」
 クムスンは苦笑した。しかし、おばあちゃんのその愛情が嬉しかった。
「帰るわ。中に入って」
「クムスン・・・」
「私は大丈夫よ」
 クムスンは手を振って帰っていった。

 家に帰りついたジョンシムはゴキゲンだった。
 まだ帰ってないクムスンへの愚痴も軽いものですんだ。
「彼女に会えなかったのにゴキゲンがいいね」とテワン。
「実はね」とジョンシムは切り出した。「あなたが銀行に入った時、彼女に会ったのよ」
「会ったの? どこで?」
「あなたが銀子に入った時よ。すぐ横に車が入ってきて止まったの。その運転手が彼女だったのよ。わざと松葉杖を落としたら、彼女が拾ってくれた。この時、うちの車を見て驚いたの。それで母さんは確信したわ。この女性だ、って」
「それで、どんな話を?」
「・・・」
「じらさないで、話してよ」
 ジョンシムはニコニコして言った。
「喉が渇いたわ。水を持ってきて」

 食事の件で部屋に来ると、息子ジェヒはまだ寝ている。オ・ミジャは微笑を残して部屋を出ていく。
 キッチンルームに戻ってきてミジャは言った。
「ジェヒのは盛らないで、起きそうにもないから」
「また一人で?」
「仕方ないわ。あなたも今日はこれであがりなさい。帰って家族と食事を」
 お手伝いは頭を下げて出て行った。
 ミジャはため息をついた。
「一人で食事するのはほんとに嫌だわ。ウンジュとはちゃんとうまくやってるのかな。起きたら今日こそ聞いてみなくちゃ・・・」

 ウンジンが学校から帰ってきた。
 ちょうどウンジュが階段からおりてきた。
「お帰り」
「ママは?」
「寝てると思うわ」
「透析は大丈夫だった?」
「そうだって」
 ウンジンは母親の様子を見てドアを閉めた。
 その音でヨンオクは目覚めた。時刻を確かめて起き上がった。
 ウンジンはウンジュのところにきて言った。
「なぜ、ママを他人のように扱うの?」
「もう、やめてちょうだい」
「私には理解できない」
「なら結構よ。大人の世界は複雑なの。食べる」
「お姉さんのその性格を知ったら、ジェヒさんは嫌がるわよ」
「心配は無用よ。うまくやってるから」
「いいえ。気に入られていたら、きっと結婚すると騒いでるはず。まだ片思いのままなんでしょ?」
「チャン・ウンジン。そのへんにしておきなさい。我慢にも限界があるわよ」
「否定できないから、黙ってるのね」
「やめなさい。次は許さないわよ」
 この時、ヨンオクの声がした。
「ウンジン、どこにいるの」
「行きなさい」ウンジュは促す。「あなたのママが起きたわ」
 ウンジンはウンジュの言葉にひっかかった。
「”あなたのママ”?」
 ウンジュは自分の失言に気付き、顔を強張らせた。
「お姉さん、今”あなたのママ”って? どういうこと?」
 ウンジュはヨンオクと顔を見合わせた。

 ソンランがシワンのところにやってきた。
「サンプルを持ってきたので見ていただけますか?」
「俺は忙しいので、ハン代理とご相談を」
「ハン代理は不在なんです。それに担当はあなたでは?」
「・・・」
「今月中に注文が必要です」
 シワンはソンランを見た。
「どこだ?」
「会議室よ」
 二人は会議室にやってきた。タイルのサンプル写真が並んでいる。
 ソンランは説明を始めた。
「これとこのタイルを使うの。VIPルームと会議室は――これとこれ・・・どう? 明るい色で統一したんだけど・・・」
「俺にはよくわからない。お前に任せるよ」
「・・・」
「それから、今後、俺は違う業務を任された。これからはハン代理と相談してくれ」
 シワンはそういい残して先に出ていこうとする。ソンランは言った。
「野暮ったいのね?」
 シワンは足を止めた。ソンランを見た。
「なぜ仕事に感情を介入させるの?」
「だから、担当者を替えると・・・」
「じゃあ、今日は? 今日中に許可が必要なの」
「だったら、ハン代理に電話しろ。すぐ来いって。ハン代理と仲もいいだろ。”野暮”で悪いが――お前とは違い、昔のようにはできない。だから、これからはハン代理と決めろ。頼むから」
 行こうとするシワンに言った。
「あなたのお母さんが来たわ」
 シワンは立ち止まる。
「一体、家で何を話したの? どうしてお母さんがここまで?」
「いつ、きた?」
「席を外してた時」
「どんな話を?」
「あなたをどう思うか聞かれた。少し戸惑ったわ」
「・・・」
「失礼もできないし、礼儀だけは守ったけど、道理から外れてるんじゃない?」
「道理?」
「そうよ。母親が訊ねてきて、息子をどう思うか、と訊かれた。想像もしなかったわ」
「俺だってそうだ。お前がバツイチだとは・・・」
「・・・」
「道理だと? お前は何なんだ? 雑誌にも未婚だと載せた。それを見た息子は傷つ・・・」
 ソンランは表情を変えた。怒りのこもった口調になった.
[あなたって人は・・・小さい男ね。あなたがここまで低俗は思いもしなかった・・・」
 ソンランが先に会議室を出て行った。
 取り残されたシワンはそのまま思案に沈んだ。思い立って後を追って外へ飛び出したが、ソンランはシワンの前を走り去った。

 ピルトはクムスンに訊ねた。
「お礼には行ってきたのか?」
「はい、おこわを持って行ってきました」
「これで少しは気が楽になるな」
 そこへシワンが帰ってきた。
「母さん・・・」
「ああ、お帰り」
 シワンは円卓の前に腰をおろした。
「今日、銀行に 来たの?」
「お前、その足で行ってきたのか?」とピルト。
「テワン、お前だろ。お前が余計なことを・・・」
「俺は最後まで止めたさ」とテワン。
「余計だなんて、ひどい言い方だわね」 
「母さん、なぜ。そんなことを・・・?」
「彼女とは別れたと断言したはずなのに・・・」
「だから、気になって行ってみたのよ」
「母さん・・・!」
 ピルトはジョンシムに言った。
「なぜ、行ったりするんだ」
「とにかく気になるから」
「大事なことは俺からきちんと話すのに、母さんは息子が信用できないのか、もう子供じゃないんです。心配だからと職場に来て。息子はどうだ? なんてどうしてそんなことをしたんです?」
 ピルトはジョンシムを見た。
「いいじゃないの・・・彼女はあなたをほめていたわ」
「母さん!」
「それで何を言ったんだ?」
「ひとまずはこう言ったわ。私はクールな性格だし、若い人のクールさが好きだ。お互いクールに正直に話し合いましょうって」
「お義母さんがクール?」
 クムスンは笑った。
「そうらしいな」とピルト。「それで本題は?」
「最近、言い争った理由を訊ねたわ」
「そしたら?」 
「ただ、笑っていたわ。それで、若い時はそんなこともある、と答えた。気になっていたので、シワンへの気持ちを聞いたわ。クールにね」
「クールに訊ねた話はさっき話しただろ。それで?」
「”シワンは自分にはもったいない男”だと・・・問題は自分のほうにあるとも言ってた。”シワンは悪くない”と」
「そうか」
 ピルトはシワンを見た。
 ジョンシムは言った。
「だからもう・・・思い切って話してみなさいよ」
「母さん・・・それは、その場だけの言葉だよ。親に向かって息子の非難をするとでも?」
「いくら何でも見れば分かるわ。彼女もあなたが好きよ」
「母さん・・・!」
「お互い好きなら、何が問題なんだ?」
「ああ、もう・・・」テワンが言った。「正直に話せばいいだろ。いったい、どうなってるんだ」
 シワンは叫んだ。
「お前は黙ってろ!」
 クムスンが言った。
「両思いでも結ばれないということは・・・まさか、お義兄さま」
 彼女の想像力は急いで回転を始めた。





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