雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載169)






韓国ドラマ「30だけど17です」(連載169)




「30だけど17です」第19話(愛の告白)⑨


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★


 チャンはウジンらと一緒に病院へ出向いた。
 踝の辺りを診察したドクターは診察の結果を答えた。
「じん帯断裂です。痛みはいつからですか?」
 チャンは渋々答えた。
「2週間前からです」
 ウジンは呆れた。
「そんなに前からか?」
 診察にあたってドクターは言った。
「数日、入院して、手術するかどうかを決めましょう」 
 チャンは殊勝に頷いた。
 それからソリを見やった。
 チャンの視線に気づいてソリは彼を見つめ返す。
 するとチャンはソリの視線を避けた。
 それから顔を顰め、ため息をついた。


― なぜ、今日なんだ…ソリさんに顔をあわせられない。


★★★


 ウジンは医局に引き返していくドクターらを追い、声をかけた。
 ドクターらは足を止める。
「甥っ子は運動選手なんです。今後に支障は?」
「そうですか…安静にして治療に努めれば大丈夫でしょう」
 ウジンはほっと胸をなでおろす。丁重に頭を下げた。
「よろしく頼みます」


 松葉づえで歩くチャンをソリは介助する。
 介助する側に回って不思議な思いになってるソリのところに、ドクターが駆け寄ってくる。
「ソリか!」
 後ろから呼び捨てされてソリの足は止まった。振り返った。
 駆け寄って来るのは高校時代の友人、キム・ヒョンテだが、ソリはそれに気づかない。怪訝そうにチャンを見やるだけだ。
 そうしてるうち、ヒョンテはいきなりソリに抱きつく。
 ソリは面食らった。
「ソリ」
 チャンはソリに抱きついている男が許せない。
「何をする、離れろ!」
 ヒョンテを引き剝がした。
「なぜ、抱きついたりするんだ!」
 しかし相手の顔を見てチャンは首をかしげる。
「あれ? いつかうちへやってきた…」
 ヒョンテはチャンを無視してソリに話しかける。
「今までどこにいたんだ」
 ソリはきょとんとなっている。
「ずっと捜してたんだぞ」
「…」
「どれだけ捜したことか」
 意味がわからないでいるソリと、一生懸命話しかけているヒョンテの間に、戻ってきたウジンが割って入った。
「何事ですか?」
 ヒョンテは目を潤ませてしる。
 何かいわくがありそうなのはウジンもチャンも感じ取った。
「どちら様です?」
 ソリは遠慮がちに訊ねた。
 目を潤ませて答えられないでいるヒョンテにソリはさらに訊ねた。
「私を知ってるのですか?」
 そこでヒョンテは言った。
「俺を覚えてなにのか?」
「…」
「ソリ、僕だよ」
「…!」
「ヒョンテだよ。キム・ヒョンテ」
 ソリの表情がゆっくり明るむ。
「ヒョンテ?」 
 ホッとした顔でヒョンテは言った。
「今までどこにいたんだ」
 ウジンとチャンを割って、ヒョンテはソリの前に進み出る。
 ソリの手を両手で握った。
「身体はもう大丈夫なのか? どうなんだ?」


 チャンが怒ってヒョンテを後ろへ引き剥がす。 
「触るなって、言ってるだろ」
 ヒョンテは後ろに押し戻された。
 横からウジンがチャンを宥めた。
 ウジンは改めて訊ねた。
「どなたです?」
 ヒョンテが答えられないでいるとソリが答えた。
「私の友達です」
 目の裏のヒョンテと今のヒョンテを重ねつつ言った。
「友達だと…このお医者さんが…」


 庭のベンチでソリとヒョンテは2人だけで話をした。
 ソリはヒョンテの変貌に意外さを感じた。だから、すぐには思い出せなかったのかも知れなかった。
 昔のなれなれしさも出せず、ソリは遠慮がちに話した。
「私の知ってるヒョンテはダンス好きだったのに」
「…」
「本当に先生がヒョンテなんですか?」
 ヒョンテはため息をついた。
「敬語で話さなくてもいいよ。僕があのヒョンテだ。僕は医者になったんだ」
「そうですね」ソリは頷いた。「ヒョンテはお医者さんになられたんですね」
「…なぜ病院から黙って消えたんだ?」
「…」
「ずいぶん、捜したんだぞ」
 またため息をつく。
「あの家を訪ねた時、会えてたら…もう少し早く」
「聞きたいことがあります」
 ソリは切り出した。
 ヒョンテはソリに視線を戻した。
「叔父さん夫婦が―私を見捨てた理由と時期を知ってますか?」
 
 ソリの質問にヒョンテはふと思い出した。
 ソリの家を訪ねた日のことだ。
 家の前であわただしく車に乗り込む叔母を目にしていた。
「どうしたんです?」
 ドアを引いて車に乗り込む叔母に訊ねても答えてくれなかった。
「私とはもう関係ないのよ」 
 捨て鉢にそう答えて走り去ってしまったのだ。
 その後、表のドアをいくら叩いても誰も出てこなかったのだった。
 あの時の叔母を悪者にするわけにいかない。
 ヒョンテは答えた。
「何を言ってるんだ」ヒョンテは軽く受け流した。「見捨てるわけはないさ」
 ソリは言った。
「ペンと荷物を残していなくなったんです」 
「でも、入院費を払ってくれてただろ?」
「…」
「だから、勘違いだよ」
「…」
「ソリを気遣っていた」
 力ない表情でソリは言った。
「私が目覚めてから一度も会いにこなかった…」 
「海外へ」ヒョンテは答えた。「行ったんだ」
「…」
「事情があってね」
「…」
「何とかして、僕が連絡を取ってみるよ。だから心配しないで」
「そうだ」ソリは訊ねた。「一緒にバスに乗ってたスミはどうなりました?」
 ヒョンテはあっさり答えた。
「引っ越していって、音信不通だけど元気にしてると思うよ」
「…」
「スミも一緒に捜してみるよ」
 ヒョンテの言っていることはソリにとって何となく半信半疑だった。
「だから、まずは検査を受けよう」
 ソリはヒョンテを見た。
「何の検査?」
「完治する前に病院を出ただろ」
 ソリは両手を広げた。
「この通り、いたって健康よ」 
 ソリはヒョンテとのやりとり空しいものを覚えた。自分の知りたいことをはぐらかされてるように感じたからだった。
 ヒョンテとの2人きりにソリは次第に息詰まるものを覚えた。
 辺りを見やり、所在なさげにして呟いた。
「おじさんとチャン君はどこへ行ったのかしら?」
 ヒョンテは言った。
「友人でなく、医者として言ってるんだ」
「…」
「それから僕に、敬語を使うのはやめてくれ」
 ソリは思わず頭を下げる。
「すみま…いえ、ごめん」
「…」
「頭では分かってるけど、初めて会う人みたいで…」
 ヒョンテはため息をつく。
「わかった。ともかく…会えてよかった。お互い、ゆっくり前へ進もう」
「…」





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