雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑪







韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑪



韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑩




★★★

 自分の部屋にこもりっぱなしのセファはいきなり胸を押えた。その場にうずくまった。痛みに襲われたからだった。
「どうしたんだろう…しばらく水に入ってないから? どうすれば…」
 部屋に引き揚げてきたジュンジェはセファの様子が変だと感じ、部屋を見あげた。
 普段着に着替えたジュンジェはテオのところにやってきた。
「家のセキュリティーはどうなってる?」
「僕を超えるハッカーがいなければ安心だ」
「ならいい。ばっちりだ」
 ソファに深々と腰を沈めてジュンジェは言った。
「今日はいいから出かけてこい」
「いいよ。出かける予定はない」
 リビングに顔を出したナムドゥにも声をかける。
「兄貴も夕方まで帰って来るな」
「どうして?」とナムドゥ。
「俺の家だ。家主の指示だぞ。従えよ」 
 「そんな薄情なことをよくも言えるな」
 ナムドゥは声を荒げた。
「この寒空の下に追い出そうってのか? お前が仕事をしないから何の予定もないんだよ」
 怒鳴り散らすナムドゥの声を聞きつけ、セファが顔を出す。
「決まりだ」
 ジュンジェはソファから身を起こす。
「今日は夕方までみんな出かけるんだ」テオとナムドゥの手を取った。
「俺も着替えて来るから先に行け」


 男たちが出かけた後、セファは久しぶりにプールの部屋に来た。

★★★


 プールに張られた水を見ながらつぶやく。
「今日は夕方まで誰も帰ってこない…って?」
 ナムドゥたちはコートをひっかけて外に出た。
「ああ、この寒い中、どこへ行けってんだ」
 ナムドゥはぼやいた。路地に立って街を眺め、ジュンジェの家を振り返る。

 セファは水遊びを始めた。狭いながらも自由気ままに泳いでいると身体はどんどん軽くなってくる。
 しかし、顔を上げるとプールの入り口にナムドゥの姿がある。
 セファは緊張した。このままでは自分の姿を見られてしまう。プールの中で動けなくなった。今からプールサイドに上がるのは遅いし、身を隠す場所もない。
「泳いでるって、真冬だぞ。寒くないのか?」
 ナムドゥは呆れた口調で中に入って来る。
 セファを見ながら入ってきたため、チェアーに気づかず足をぶつけてしまう。しかめっ面で痛む足のつま先を両手で抱え込んだ時、ナムドゥの身体はバランスを失う。上体はプールの方へつんのめった。
 この時、セファの姿がナムドゥの目に飛び込んでくる。
 驚きがナムドゥの顔に浮かび上がった。大きな魚のひれがプールの中に見えるからだった。
「それは…?」



 ナムドゥは身体を起こした。
「ひどく変わった水着だな…水族館の人魚ショーにでも出るつもりか?
それなら面白い。俺はまた一瞬、本物かと…はっははは、バカバカしい、俺は何をとち狂ったんだか…すまんすまん、テレビの見過ぎだな…あまりにリアルだったものだから…」
 この時、ナムドゥはセファとのやりとりやら、ヒスイの宝石やら、事故に遭った彼女が強靭な回復力を見せたことなどを思い起こした。
「この真珠、どこで手に入れた?」
「努力の成果よ」
そんなこともあった。
 努力で真珠を増やせるはずがない。事故の後に見せた驚異の回復ぶりといい、彼女の周辺では不思議な出来事が頻発している…。
 ナムドゥは難しい顔になった。この女には奇妙で腑に落ちないことばかりが起こりすぎる…。
 ナムドゥは水中にあるセファの足元を見つめる。それが人魚になるためのパーツでなく本物だとしたら…?
「まさかな…」
 しかし、心の底からは疑いばかりが膨らんでくる…。
 

 正体を悟られたと感じたセファはナムドゥに言った。
「ガウンを取って」
 ナムドゥはチェアにかかったガウンを握る。
 プールサイドに上がったセファはガウンを羽織る。
 セファには二本の脚が戻っている。
 セファの下半身が一瞬で変わってしまったことに驚き、ナムドゥは後ずさりする。
「おい、どういうことなんだよ?」
 セファは黙ってナムドゥに歩み寄る。
「この世にこんなことが? 嘘だろ? 外国の機関にでも通報したのがいいのかな…FBIとかさ…」
「ジュンジェに話す?」
「ジュンジェ? さあな…お前の答え方次第だな」



 ナムドゥににじり寄っていくセファ。
「ダメだ、それ以上近づくな!」
「…」
「つまりお前は…水中から陸に上がると足が生えるのか?」
「ええ」
「まいったな、なんてこった。あっははははは…この前の真珠は何だ…お前の涙だったってわけか?」
「そうよ」
「泣いてみろ」ナムドゥは言った。「泣いて真珠を出してみろ」
「…」
「泣けよ。それが本当か確かめたいんだ」
「…」
「まあいい。時間はたっぷりある。わっははははは…こりゃいい。俺も運が向いてきたぞ」
「真珠をあげるから、ジュンジェには秘密にしてくれる?」
「何言ってる。せっかくのマーメイドなのになぜ秘密に? 俺たちは大金持ちになれるんだぞ」
「嫌よ。興味ないわ」
「俺は違うぞ。興味程度じゃすまないぞ。まずはラスベガスにでも行こう。そこでだ。人魚ショーのワールドツアーを始めるんだ」
「私を売る気なの?」
「違うよ。まずは俺に仕事を仲介させろ」
「…」
「通報するしないじゃなく、一緒に儲けようって話だ」
「…わかった」
「わかった?」
「うん」
 セファは握手を求め手を差し出す。
「そうしましょう」
「悪手? 握手ね」
 ナムドゥは差し出そうとした手をいったん引っ込める。
「何もないよな。安全だよな」
 ナムドゥは頷き、さっと手を差し出す。セファの手をがっちり握る。
 その瞬間、ナムドゥの身体には奇妙な電流が流れた。
 これまでに集積した様々な記憶が映画のフィルムみたいにひとつながりの映像となって脳内から流れ出して行った。

 そうしてセファの手の感触も消えた。
 ナムドゥの意識から数分の事象が切り取られていた。
「泳いでたのか?」
 ガウンを着て目の前に立つセファに訊ねた。
「真冬に寒くないのか?」
 





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