雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第2話⑬






韓国ドラマ「青い海の伝説」第2話⑬
Korean drama "Legend of the Blue Sea" Episode 2 ⑬

 

第2話⑫…

「それで上手く行くのか?」
 とジュンジェ。
「ああ、特殊な空間だからな」
「俺に何をやれと?」
「簡単なことだ」
「…」
「歌で信者たちを恍惚状態に導いてくれ」
「歌か…」
 ジュンジェは女を見て呟いた。 

★★★



 ジュンジェは詐欺仲間の筋書きに乗って教会のステージに立った。ギターの弾き語りで”愛と信頼”を歌った。
 ジュンジェの歌声は説得力があった。
 教会に集まった人たちはジュンジェの歌声に聞き惚れた。涙を流す者もいた。
 ジュンジェが連れてきた女も彼の歌声に聞き惚れた。ジュンジェが歌い終わると立ち上がり、心から手を叩いた。両手を挙げて「ハレルヤ」と叫びながらワイフの役を完璧に演じた。
 ジュンジェの歌声によって詐欺仲間の描いた筋書きは予想以上の成果をもたらしたのだった。
 集会のリーダーはジュンジェたちを部屋に案内した。
「狭い部屋しかご用意できず申し訳ありません」
「お構いなく」
 ジュンジェについて歩きながら女は言った。
「私、喉が渇いたわ」
「お水ならあっちです」
「ああ、あそこか。行って飲んでこい」 
 女は言われた通り、飲料水を設置したボックスに向かった。
 集会のリーダーはジュンジェに言った。
「奥様がお言葉を取り戻されて本当によかったですね」
 二人がやりとりする間、女は飲料水を設置したボックスの前に立った。
 女から見えるのは水の入った大きなビンの容器だけだった。容器はひっくり返され、飲料ボックスの中に首を突っ込んでいる。
 飲み方の分からない女はビンの容器に手を当て、揺さぶり出す。
 女の異変に気付かず、ジュンジェはリーダーとの応接を続けている
「…ですが、まだ身体が弱っていて」
 女に目をやると、彼女は大きな容器を飲料ボックスから抜いてラッパ飲みしだしている。
 2人は目を見合わせた。ジュンジェは言った。
「もうすっかり元気になったようです」
「よかったですね」
 2人は笑顔と礼を交し合う。
 2人は案内された部屋に落ち着いた。寝転がって休息を取る。
「すごかったな。一本丸々飲み干したんだからな…」
 天井に目をやったまま女は訊ねる。
「”あい”って何?」
「おっ?」
「さっき、”あいが一番”って歌ってた。どういう意味?」
「それか…愛とは―」
 女は耳をそばだてる。
「危険なものだ。お前には向かない」
 女はベッドから床におりる。寝転んでいるジュンジェのそばに来る。
「どうして?」
 女を見てジュンジェは身体を起こす。
「誰かを愛するってことはその人に降伏するってことだ」
「降伏って?」
「負けるってことだ。誰かを愛したら、そいつのすべてを信じてしまう。それはじつに危ないことなんだ」
「…」
「だから”愛”なんて言葉は安易に口にしちゃいけない」
 ジュンジェの話が終わらないうちに女はその言葉を口にする。
「愛してる」
 そう言われてジュンジェの顔から笑みが消える。真剣な表情で女を見つめ返す。 
 間があってジュンジェは荒っぽい口調になる。
「危ないって言っただろが」
 そんな言葉は聞きたくないとばかり女は話を変える。
「お腹すいた」
 ジュンジェは女を店に連れ出してラーメンを食べさせる。
 食事するのを眺めながらジュンジェは口を開く。
「お前はおそらく…記憶喪失だ」
「…」
「自分のことを思い出せないんだろ? 俺の目を見ろ」
 2人は見つめあう。
 女は目をパッチリ開く。真剣にジュンジェを見つめる。ジュンジェが先に目を背ける。照れ臭そうに言う。
「そんなに強く見つめなくても…いいか、俺が三つ数えたら両親のことを思い浮かべろ」
「…」
 ジュンジェは自慢のライターを取り出した。
「行くぞ。…一つ、二つ、~3つ。両親は?」
「何のこと?」
 ジュンジェはライターをテーブルに置いた。
「何のことってまったく…お前を生んでくれた人だ。それも知らないのか? お父さんやお母さんのことだよ」
「いないわ」
 女はあっさり答えた。
 ジュンジェは驚く。
「確かに親のいない人もいるからな」
「あなたはいるの?」
 ジュンジェはしばし考え込む。
「父親はいないも同然。母親は…どこかで生きているだろう。だから捜しに行くつもりだ」
「どこへ?」
「世界の果てまでだ」
 女の真ん丸い目を見てジュンジェはふっと笑った。
「気になるか?」
 女は目を落とす。
「ところでお前の名は?」
 女はジュンジェを見つめ返す。
「ないけど…」
「そうか…しかし、もう驚かないよ。ほんと変な女だ」
「私が変じゃなくて名前も持ってたら、あなたと一緒にいられるの?
そういうこと?」
「そういう意味じゃない」
 ジュンジェは砕けた調子で言う。
「本当に変なやつに比べたら、お前はまだ普通だよ」
「ほんと?」
「そうさ…俺の方がよっぽど変だよ」
「あなたはいい人よ」
 ジュンジェは鼻で笑う。
「何も知らないからそういうのさ」
「いいえ。あなたは最後まで私を置き去りにしなかった」
「…」
「あなたはいい人よ」
 女の言葉は胸深く滑り込んでくる。ジュンジェは目を落とした。女の言葉を強く噛みしめた。 



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