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「サンシリッ! どこだ、 サンシリッ!」
自宅に戻ってきたチョルスはアンナを探した。
しかし、アンナの姿はない。片付いた部屋はしんと静まり返っている。
アンナの寝床を見てチョルスは立ち尽くした。
きれいにたたまれた毛布と携帯、携帯の下に紙切れが目に止まったからだ。
そばに歩み寄り、紙切れを指で抜き出す。
☆チャン・チョルス。私、記憶が戻ったわ。メモは残したわよ。私、行くわ。私も頑張るから、あなたも元気でね。机の中のお金はいつかお返しするから。
ナ・サンシル
チョルスは家を飛び出した。車に乗り込んだ。
「見つけるのが先決だ」
走り出す前に知り合いの協力を得ようとチョルスは考えた。
画像入りで方々に”人捜し”のメールを発信した。
友人らは次々とこのメールを受け取った。
「おっ! チョルスが人を捜してるぞ。この人だそうだ」
「何だって? どこの誰だ?」
情報は町中に伝わっていった。
「この人を捜してるんだってさ」
「どれどれ」
車を走らせているチョルスに目撃情報が次々と返ってきだす。
――市内行きのバスで目撃。
――ターミナル前で目撃。
――高速バスの切符を購入。
高速バスの中にまで情報は行き届いた。
後ろの席に座った乗客は斜め前方の席に座ったアンナを目ざとく見つけ、頷きあった。そして目撃情報を発信した。
高速バスはパーキングエリアに入った。アンナは手洗いをすませて戻ってくる。
「ずいぶん遠くまで来たわ・・・」
この先どうするかを彼女は考えながらバスに乗り込もうとする。
この時、誰かの手が肩にかかった。
振り返ってアンナは呆然となった。
「チャン・チョルス! あんたどうしてここにいるの?」
「お前を捜してやってきた。とりあえず行こう」
チョルスはアンナの手を取った。
「イヤよ」
アンナはチョルスの手を拒んだ。
「私は行くわ」
「ほんとに記憶が戻ったのか?」
「そうよ。もうあんたとは関係ない。お金は返すから心配しないで」
「”記憶が戻った”だと!?」
「そうよ。これでいい?」
チョルスはアンナの身体を揺さぶった。
「だったらどうして”サンシル”のままなんだ?」
「・・・どういうこと?」
「お前は・・・ナ・サンシルじゃないんだ」
アンナはチョルスの真剣な目をじっと見つめ返した。
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