韓国ドラマ「病院船」から（連載121）

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韓国ドラマ「病院船」から（連載121）

「病院船」第11話➡私に構わないで⑧




★★★


　病院船の船長がその電話を受けた。
　情報を引き継いで船内に放送を流す。
「この島で緊急の患者が発生しました」
　ヒョン、ウンジェ、ゴウン、アリムの救急スタッフが島の乗用車トラックで現場に直行した。
　巨済市から警備艇も出動した。
　
　
　船長は居残りのスタッフの前で文句を並べた。
「蜂に刺されたくらいで救急や海洋警察を呼ぶとは情けない…おかげで病院船まで大騒ぎだ」
「まったくだ」
　と事務長も同調する。
「ところで」設備のカン・ジョンホが訊ねる。「蜂の毒は危険なんですか？」
「そんなのミソでも塗っておけばすぐ治るだろ」と船長。
「ミソとは古いな」と熊さん、いや事務長。
「そうです」と韓方科の看護師。「蜂の種類にもよります」
「スズメバチなら大変でしょう？」
「もちろんです」とジュニョン。「アナフラキシーショックで死ぬこともあります」
「蜂に刺されて死ぬだって」と船長。「うわ～、最近の蜂はこわいんだな～」
　事務長は同調できずに困った表情をする。
「昔はおとなしかったのに…」
「それはちょっと」と事務長。


★★★


　ヒョンたちは現場に到着した。車をおり、急いで現場に駆け下りる。看護師たちが医療道具を持って続く。
　ウンジェは何も持たずまっさき患者のもとに駆け付ける。
　若者は蜂に刺され、父親の上に折り重なって失神していた。
　若者にウンジェが声をかける。
「もしもし、目を開けてください」
　しかし、若者の反応はない。
「どうしたの？　お父さんを守ってるの？」とゴウン。
　ウンジェは父親に声をかけた。
「もしもし、お名前は？」
　父親は声を発した。
「テウク…」
　ウンジェはアリムや車を運転してきた甲板長に指示を出す。
「息子さんをどかし、仰向けに」


　警備艇も島に到着した。


　現場では応急処置が迅速に進む。
　ヒョンは父親の治療にあたる。
「お名前を」とヒョン。
　父親はそれに答えず、”テウク”の名を魘されたように呼び続けている。
「エピネフリンを」とヒョン。
、ウンジェは息子の治療にあたった。
　当てていた聴診器に反応が出ない。
「自発呼吸なし」
　ウンジェは聴診器を放した。気管挿管の準備を促す。気道確保の態勢に入る。
「喉頭浮腫で挿管できない」
「了解です」
　ゴウンは執刀の準備をする。
　ウンジェの握ったメスが息子の喉に向けられた時、現場に駆け付けた男の1人が叫んだ。
「喉を切るのか？」
　これに誰も動じず、治療は進む。


　ヒョンの診ていた父親に異変が発生した。気道を確保して自発呼吸を促したとたん、心停止が発生する。
「心停止だ。除細動器を」とヒョン。「早く」
　アリムが準備にかかる。
　
　ウンジェは首にメスを入れ、ここから気道の確保に乗り出す。
「入ったわ」
「よかった」
　慎重に酸素が送り込まれる。
　ひと息ついたウンジェは父親の蘇生に励んでいるヒョンたちに心配そうに目を送る。
　ウンジェの見ている前で父親も息を吹き返した。
「戻った」
　安心したヒョンはウンジェ達の方を見やる。　
　そこでウンジェとヒョンは目が合った。
　親子を無事に救った嬉しさに使命感がまざり、2人はほのぼのとした笑みを交わし合った。
　
　
　病院船内は静けさを取り戻した。2人の容体は少しずつ回復に向かった。
　ウンジェが2人の様子を見にやってきた。ゴウンは言った。
「先生、お父さんの意識が戻りました」
　ウンジェは父親の前に立った。
「お気づきになりましたか？」
　しかし、反応はない。
「お名前は？」
　ウンジェは怪訝そうにする。
「テウク…」
　ウンジェらは目を合わせる。
「患者さん」
「息子はどうなった？」
「まだ意識が戻りません」とウンジェ。
「な、な、何だって？」
　父親はいきなり上半身を起こす。ベッドを脱け出ようとする。　
　ゴウンらはびっくりする。
「安静にしてないとダメです」
「息子はどこだ？」　




　ヒョンは草刈り中、蜂の襲来を受けてケガした2人について、駆けつけた警備艇のスタッフたちに説明を行った。
「容体が安定したら、病院に移します」
「はい、了解です」
　説明がすんだ時、奥で父親の叫ぶ声が聞こえた。
「テウク！　テウク、しっかりしろ」
　ヒョンは警備艇のスタッフに挨拶して背を返した。